日記
17. 抽出速度
17.抽出速度
■速度による風味の違い
コーヒーはデリケートな飲み物なので、抽出する早さによって、風味が変わってきます。当たり前の事ですが、早くお湯を注げば、その分、早く粉を通り抜けます。また、高い位置から注げば、重力の関係で落下速度が速くなり、勢いよくお湯が通り抜けるので、必然的に抽出速度が速くなります。10cmでも高さが変わると、抽出速度はかなり変わるのです。早い速度で抽出すると、酸味や甘味などの成分が抽出されやすく、遅い速度で抽出すると、苦味やコクなどの成分が抽出されやすくなります。極端な話、挽き方を粗くして早く注げば酸味中心の軽いコーヒーになり、挽き方を細かくして、ゆっくり注ぐと苦味の強い濃厚なコーヒーになるということです。
ペーパードリップで抽出速度に違いが出る要因は3点ほどあります。 豆の焙煎において、浅煎りより深煎りのほうが速く落ちます。 また、細挽きより粗挽きのほうが速く落ちます。 焙煎したて(新鮮なもの)より焙煎から時間の経ったものの方が速く落ちます。 一般的に珈琲の抽出時間は、3分間(イブリックは例外)を上限とします。時間が長くなると、雑味を引き出してしまいます。また速すぎると、甘みが充分に抽出できません。ペーパードリップの場合、この時間をコントロールするために、紙の目が詰まっていないヨーロピアン・タイプと目が詰まり気味のレギュラー・タイプ、その中間のタイプがあり、使い分けることで、3分間の抽出時間をコントロールします。湯を、ドリッパーの真ん中に、小さな円(100円玉程度)を描くように注ぐ。中心を狙って注ぎ、ペーパーフィルターを濡らさないようにしましょう。ペーパーを濡らすと、水のバリアが出来て、コーヒーの脂成分が上手く抽出できません。ペーパーにコーヒーの脂分が最初に触れるように、この段階で濡らさないようにしましょう。粉の近くから優しくお湯を注げば、難しくありません。注ぐお湯の分量は、少量です。目安はサーバーにポタポタと数滴落ちる程度です。
■ハリオ式/ひとつ穴
一般的な扇形のものと異なり、こちらは円錐型です。お湯が中心に向かって流れ、フィルターの下までぎっしり詰まったコーヒー粉の層をじっくりと通過するため、旨味(コーヒーオイル)をより多く抽出することができます。「ネルドリップに近い抽出ができる」と言われるのはこのためです。ネルは、使うたびに洗ったり、洗った後に乾かしすぎてはダメなど管理がなかなか大変です。ネルで淹れたような旨をペーパーフィルターで出せるのは嬉しいことです。お湯が中心に集まる秘密、もうひとつは内側に刻まれた螺旋状のリブ(凸部)です。ペーパーとドリッパーの間に少し空間をつくることで、蒸らしの際に空気がほどよく抜け、珈琲の粉がしっかりと膨らむという役目も果たしています。また、注目すべきポイントは、下に空いた大きめの穴、お湯が溜まらず流れるので、 ゆっくり注いで濃厚な味に、手早く注いでスッキリした味にと味わいに自在に変化をつけられます。
◆各工程の意味、重要性
蒸らし
コーヒー粉の表面を湯で湿らせて、しばらく置く状態のことです。主に、ペーパードリップやネルドリップで抽出し始める時に行います。 でも、早くコーヒーを飲みたいのに何でわざわざ蒸らすのでしょうか。
1)全体を均一に湿らせることで、偏った湯の通り道を作らず、均一に抽出できるようにするためです。 しっかり均一に蒸らすことができれば、抽出時に真ん中にだけお湯を注いでも、ちゃんと全体から抽出されます。
2)コーヒー粉が湿ることで膨張し、湯に触れる面積が増え、さらに湯が浸透しやすくなって成分がしっかりと抽出できます。 抽出時間が短いと、軽くてコクの足らない薄っぺらな味わいになり、逆に長すぎると、苦み・酸味が出過ぎてキツイ味わいになります。
では、どのくらい蒸らすと一番美味しいのでしょうか。
-----------------------------------------
蒸らし時間 味の特徴
-----------------------------------------
0秒 軽くてコク・香りが少ない。
30秒 コクと香りが出てくるが、やや軽め。
60秒 コクと香りが出ていて、まろやかさと甘みあり。
90秒 コクと香りが出ていて、苦み酸味がハッキリ。
120秒 香りが少なく、味わいのバランスが崩れキツイ感じ。
-----------------------------------------
私は、「1分前後」が一番味わいとして完成度が高いように感じました。酸味・苦みのバランスも良く、それぞれの味が突出していません。甘みも一番強く感じられました。 そして、まろやかな口当たりで、喉ごしも雑味が残りません。 あくまでも、美味しい豆を「より」美味しくする手段なので、マズイ豆が美味しく変身することはありません。
■むらしと抽出の関係
どの書籍にも書かれている工程「蒸らし」、膨らまないのは鮮度が悪い証拠だと認識している方も多いかと思います。これは、コーヒーを効率よく抽出する為に蒸らしているのです。コーヒー豆は焙煎することによって、ハニカム構造といって蜂の巣のような六角形が連なる空洞ができ、体積が増えます。この空洞は、0.01mmほどの大きさで内部には焙煎によって発生した炭酸ガスが溜まっています。ここに1投目のお湯を注ぐこと(蒸らし)によって、内部では炭酸ガスが押し出され、空洞内にはお湯が滞留します。この時お湯はコーヒー成分を溶かしコーヒーエキスで満たされます。押し出された炭酸ガスによってモコモコと膨らみ、コーヒードームができるという仕組みです。30秒程蒸らすのは、この炭酸ガスの放出が落ち着くまでの時間からきています。そのため30秒というのは目安に過ぎず、実際に粉の動きを見てから2投目を注いだ方が良いです。
この空洞は焙煎が深いほど多く形成され、焙煎が浅いほど少なくなります。浅煎りと深煎りでは膨らみ方が違うのはその所以です。また、炭酸ガスは時間の経過と共に自然放出されるので、古い豆だと膨らみません。
■抽出の仕組み
「浸透圧」という言葉をご存知でしょうか、濃度の違う溶液が均一濃度になろうとする圧力のことです。コーヒーエキスはこの浸透圧がかかることで抽出されます。サイフォンやフレンチプレスのようにお湯に粉を混ぜて抽出する方法を浸漬法(しんしほう)と言います。浸漬法では、粉の内部(空洞内)の濃度と粉の周りのお湯の濃度差によって浸透圧がかかります。容器内のお湯の濃度が均一になった時点で浸透圧が止まり抽出が終わります。浸透圧が止まった後も粉とお湯を分離しないと、コーヒーエキスではない雑味成分まで溶け出してきます。そのためサイフォンやフレンチプレスはお湯を注ぎ、時間を気にしながら抽出するのです。一方、ハンドドリップのような抽出方法を透過法(とうかほう)と言います。透過法では蒸らしの時に高濃度のコーヒーを粉内部(空洞内)に作り出し、2投目以降のお湯を注ぐことによって浸透圧をかけてます。前述した通り、コーヒーエキスと雑味成分ではコーヒーエキスの方が先に溶け出します。透過法は繰り返しお湯を注ぐことによって、雑味成分が溶け出す前のコーヒーエキスだけを浸透圧によって抽出することを狙っています。ですので蒸らしをしっかり行わないと、サーバーに流れる前半のお湯にはコーヒーエキスが十分に溶け出していないコーヒーが出来上がってしまうのです。そして全体的に希薄な味わいになってしまいます。
■カップ1杯=○○ccの統一規格があるわけではない
12gのコーヒー豆から120cc抽出するのか140cc抽出するのかでは味に大きな開きができます。では、100gの豆でカップ何杯分を淹れられるのか、考えてみます。カップの容量が120ccと仮定して、1杯12gを基準とすると、単純計算で100[g] ÷ 12[g] = 8.3[杯] となります。シンプルに答えると「100gで概ね8杯分が目安」です。ただこれも、まとめてドリップする人(いつも家族の分も含め2杯以上をまとめてドリップする)だったら答えが変わってきます。コーヒーの面白いところが、2杯分一緒に抽出する時に必要な豆の量は2倍の24gではありません。2杯分を24gで淹れたコーヒーは1杯分を12gで淹れたコーヒーより濃く感じると思います。人それぞれの濃さ基準があるのですが、私は、2杯分を抽出する時は1杯分の約1.6倍の量の豆を使用します。1杯12gだとしたら2杯で19.2gで良いということです。ということは毎回2杯分抽出する人の場合は100[g] ÷ ( 19[g] ÷ 2[杯] ) = 10.526[杯]となるので、100gで概ね10杯分のコーヒーが抽出できる計算になります。これがコーヒーマシンで一気に4杯分抽出する人であれば、もっと差に開きが出ます。
条件次第で答えは変わるのですが、それでも漠然とした目安が必要かと思います。そんな時は「ペーパードリップであれば1杯12gが目安」という基準で考えることにしています。
16. 抽出温度
16.抽出温度
<低温>
80℃以下の低温では、酸味がやや強くなり、苦味がぼやけてきます。購入したコーヒーが苦いと感じるようなら、湯温を下げて抽出してみると良いでしょう。
<適温>
82~83℃での抽出を推奨しています。酸味と苦味、香りのバランスがベストに抽出される温度帯で、これを基本に好みで調節すると良いでしょう。
<高温>
85℃以上の高温では、苦味が強く出る傾向にあります。また、エグ味も短時間で出やすくなるため、よほど苦味が好きな方以外には推奨できません
お湯の温度はどれくらいがいいか
どの温度がどんな味を引き出してくれるか、それぞれのロースト度合いに合った湯温とはどんなものなのか、ドリップ抽出の場合を整理してみましょう。
低温(78~83度) = 深煎り向きです。(フルシティーロースト・フレンチロースト・イタリアンロースト)
このくらいの湯温は、苦味を押さえ刺激の少ない味を作り出します。深煎りの場合にはベストな温度でマイルドな味を引き出しますが、浅煎りの場合は豆が堅いため十分に味が 引き出せず酸味が強調されますので気を付けて下さい。
適温(86~93度) = 浅・中煎り向きです。 (ミディアムロースト・ハイロースト・シティロースト・フルシティーロースト)
甘・酸・苦味の整ったバランスの取れた味を作ります。
高温(95~99度) = コーヒーには不向きです。 成分が出過ぎて、苦味・渋味の強いコーヒーになります。古い豆を使用した場合は、出来上がったコーヒー液の表面に油が浮くことがあり ます。
湯を沸かす時に、お湯を一度沸騰させるかどうかについては諸説あるようです。結局のところカルキを十分に抜くために、沸騰させると良いでしょう。カルキがもともと少ない水は、必ずしも沸騰させる必要はありません。沸騰直前(大きめの気泡が出始めるぐらい)まで、沸かすと良いでしょう。このとき、ポットの中の温度が90℃~95℃程度になっていると考えて下さい。このあたりが「やや高めの湯温での抽出」の温度です。 気体の溶解度は温度が上がるほど小さくなっていきます(温度とは分子の運動の激しさを測る尺度です。ですので温度が上がれば分子の運動は激しく
なり、外へ飛び出す分子の数が増えていきます)。従って沸騰していなくても温度が高ければ溶けにくくなって出て行きますし、沸騰しているからと言って完全に出て行くわけではありません。煮沸して「出来るだけ多くの」二酸化炭素を追い出すことが出来るということです。
■グツグツに沸騰したお湯でコーヒーを淹れてみた結果
上手にコーヒーをドリップする方法は今やネットでいくらでも情報が入ります。共通しているのは「沸騰してから少し温度が下がったお湯で抽出しましょう」という部分です。この温度もピンキリで、80℃~95℃の中でアマからプロまで様々な見解があります。もちろん豆の種類や焙煎度・状態に応じて適した温度も変わってきます。そして何より最終的な味のジャッジは飲む人の舌に委ねられているので、「抽出温度は〇〇℃で統一」とは今後もならないでしょう。沸騰直後のお湯を推奨している人はあまり見かけませんが、検証してみます。
実験開始 → グツグツのお湯を用意しました。
沸騰 → フルシティローストを使っていつも通りの手順で抽出していきます。普段なら適正温度に下がるまで待ちますが、実験の為このまますぐに蒸らしにかかります。高温の為勢いよく膨らみます。
蒸らし → 30秒間蒸らし、ドリップしていきます。普段よりも大きな気泡を含んでいます。沸騰したお湯で抽出、ここでまず1つ、違いに気付きました。漂う香りが臭い、表現し辛いのですが、焦げ臭いというか革製品の様な臭いというか、とにかく良い香りではありません。
テイスティング → 案の定、先程の異臭が移り込んだコーヒーに仕上がりました。口に入れてみるとすぐに刺激の強い苦味を感じました。
結論 → 沸騰したお湯でドリップすると不味いコーヒーになります。強いて言うなら、徹夜仕事で気合を入れる為に飲むなら効果はありそうです。
■ぬるま湯で淹れるコーヒー
コーヒーは80℃~95℃の間で抽出されることが多いです。温度が高くなる程、コーヒーの「雑味」や「えぐみ」が溶け出し易くなる(短時間で溶け出す)と言われていて、実際に私もその通りだと思っています。これが「温度が高いと苦味が強くなる」と言われる所以でしょう。逆に、温度が低いお湯で抽出した場合は先程の雑味成分が溶け出し辛いので軟らかい味わいになります。その分、味の輪郭がぼやけてしまったり、仕上がりのコーヒーがぬるくなってしまったりします。(コーヒーは再加熱をすると香りが飛んでしまうので、基本的にはドリップ後の温度で飲み始めます。)
ですので、抽出の際は好みとバランスを考えながら温度を決めます。ところが例外的な抽出方法があり、『水出しコーヒー』は温度の高いお湯を使わず、常温水もしくは冷水を使います。ただし、ハンドドリップやプレス式の様に2~3分という短い時間で抽出せず、数時間~1日という長い時間をかけてじっくりと抽出します。その味わいは角のない、クリアなものとなります。ということは常温でもなく、熱湯でもない50℃のぬるま湯でドリップをすれば通常のドリップと水出しの両方の良いとこ取りができるのではないでしょうか、その代わり再加熱をしないのであればぬるいコーヒーを飲むというデメリットもあります。
<検証、ぬるま湯でのドリップ>
ぬるま湯での蒸らし → 案の定膨らみません。気持ち色が薄い。
テイスティング → 良くも悪くも苦味は通常時に比べ弱く感じました。口当たりは良いです。ただし、香り立ちは少なかったです。そして問題の濃度ですが、やはり少し薄めでした。ただし、飲めないほど酷いのかと言えばそんなことは全くなく、こういうコーヒーもアリと思いました。唯一目につくところと言えば、やはり「ぬるい」というところでしょう。そもそもそこまで香り立ちはしないので、再加熱しても良いかもしれません。
まとめ → ぬるま湯でドリップする必要(メリット)は特に無いということです。特別な事情があれば別ですが、わざわざ温度が下がるのを待つのも面倒ですし、ぬるま湯で仕上げたコーヒーが感動するほど美味しいかと言われればそうでもありません。ただ単純にコーヒーとして飲める許容範囲内に収まっているということです。わかったことは温度が低ければ低いほど、口当たりは良くなるということです。
■適温、温度変化
コーヒー液を抽出するには、抽出に適した温度があります。抽出に適した温度とは「80~85℃」これより高い温度で抽出すると、コーヒーの旨味成分よりエグミや雑味の方が出やすくなるため、例のごとく不味いコーヒーになってしまいます。逆に低い温度になると、成分がちゃんと出ず水っぽいコーヒーになってしまうのです。だから、この温度を毎回ちゃんと守って抽出するのが大事なのですが、沸騰したお湯の温度は高すぎるし、ポットの保温したお湯ではちょっと低い、実に中途半端な温度なのです。では毎回温度を測って淹れなきゃいけないのか、とても面倒くさい工程です。これは、お湯を移し替えることで解決します。
①お湯を沸かす
②沸騰したら、お湯がボコボコなっているのが収まるまで待つ
③ボコボコが収まったら、ドリップポットに移し替える
④注ぐ
以上。これだけです。お湯を注ぐ時はだいたい80℃~85℃の間の温度になっています。ポイントは「お湯のボコボコが収まるまで待つ」ということ。ボコボコしてから収まるまでの間で10℃ぐらい下がるので、あとはドリップポットに移し替えてる間にさらに下がって丁度良い温度になる、ということなんです。
■実験 お湯の冷め方
◎気温/20度 ・器具/やかん ステンレス ・湯量/600ミリリットル ・ふたを開ける
・1分後97.4℃ ⇒ 2分後94.6℃ ⇒ 3分後91.5℃ ⇒ 4分後89.0℃ ⇒ 5分後86.5℃ ⇒ 6分後84.0℃
・銅ポットへ移し替えると 92.0℃ → 1分後88.4℃ → 2分後85.8℃
15. 抽出方法
15.抽出方法
■ペーパードリップ
ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、挽いたコーヒー粉を入れ、湯を注ぎ抽出する方法です。コーヒー粉の層を湯が通って抽出される「透過法」という種類の抽出方法になります。手軽でかつ衛生的で後始末が簡単なこともあり、日本で一番普及している抽出方法でしょう。ペーパードリップは1908年にドイツ人のメリタ・ベンツが考案した抽出方法です。それから100年以上たった現在では実に様々な形状のドリッパーがあります。
【ドリッパーの形状】
◆メリタ式:小さな1つ穴で台形型のドリッパー。穴が小さいため抽出スピードが一定になるのが特徴です
◆カリタ3つ穴:カリタの通常のドリッパーは3つ穴で台形型。小さな一つ穴に比べて抽出スピードが早く、注ぎ方でコントロールすることができます
◆カリタ ウェーブドリッパー:3つ穴ですが、形状は円筒形。ペーパーが波型で、業務用コーヒーメーカーのドリッパー部分をそのまま小さくしたような形状です
◆コーノ式:円錐形の大きな一つ穴。ネルドリップに近い抽出を目指して開発されたドリッパーです
◆ハリオV60:コーノ式と同じ円錐形の大きな一つ穴。リブ(内側の溝)がらせん状に上部までついているのが特徴です
◆ケメックス:ドリッパーとサーバー一体型で非常に大きなペーパーフィルターを使用します
◆ドーナツドリッパー:円筒形の陶器にドーナツのような木枠がはまったドリッパー。デザイン性の高いドリッパーです
ペーパードリップの特徴は、紙で漉すという点です。コーヒーの雑味を紙が吸収してくれて良い部分だけが綺麗にカップに落ちてくるという見方もあれば、コーヒーの良い風味がつまった油分(コーヒーオイル)が紙に吸収されてしまうので物足りなく感じる、という見方もあるようです。
日本人はどちらかというと、油分がしっかり入ったフレンチプレスのどろっとしたコーヒーより、ペーパードリップのすっきりしたコーヒーを好む人が多いような印象です。欧米の料理に比べて日本料理があっさりしていることも無関係ではないでしょう。
ペーパードリップは、
1,焼きたて、挽き立て、たて立て」を簡単に楽しめる
2.道具が安くて、高価な専用器具が必要ない
3.シンプルな構造なので洗浄が簡単で、いつも清潔
4.自分で調節して、好みのコーヒーの味を作ることが出来る
など、メリットがたくさんあります。しかし、アメリカのスペシャルティコーヒー業者の間では、10年以上もの長い間、ペーパードリップは「異端」の扱いを受けていました。「ペーパードリップは、コーヒーオイルを吸着してしまう『コーヒーオイル = コーヒーの美味しさ』だから、ペーパードリップは、悪い抽出方法である」「スペシャルティコーヒーは、エスプレッソやコーヒープレスなど『金属フィルター』で抽出しなければならない」これらの意見は、アメリカのスペシャルティコーヒー業者がずっと言い続けてきたことですので、コーヒー好きの方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし、繊細な味覚を持つ上に1日に数杯しかコーヒーを飲まない日本人には、コーヒープレスは制約が多い、オススメしにくい抽出方法です。それに、ペーパードリップがマズいのは抽出が大雑把なだけで、丁寧に抽出すれば問題ないはずです。ここ数年、アメリカを中心にペーパードリップが流行ってきており、日本のハリオ式ペーパードリップが世界中で大人気なのです。「サードウェーブ」と呼ばれる世界中で流行しているタイプのコーヒーショップは、オーダーの際にコーヒーの抽出方法を選ぶことが出来て、「エスプレッソ」「コーヒープレス」「ハリオ式ペーパードリップでハンドドリップ」の3つから選ぶことが多いのです。今では、ペーパードリップを悪者にするコーヒー業者は、ただの「勉強不足」と言ってよい状態です。
【ペーパーフィルター】
多くの人に親しまれているペーパードリップは、1908年にドイツのメリタ・ベンツによって考案されました。彼女は、夫にもっと手軽に美味しいコーヒーを飲ませてあげたいという想いから、コーヒー粉がカップに入ることがなく、ゴミ捨ても簡単なコーヒーの抽出方法を考え出しました。これが、ペーパードリップシステムの始まりです。 ペーパーフィルター用のドリッパーは、製品によって穴の数が違います。主にひとつ穴の「メリタ式」、3つ穴の「カリタ式」の2種類で、淹れ方も異なり、焙煎度などによって道具を使い分けます。ドリッパーの形状と大きさに合わせて、ペーパーフィルターも、台形型か、円錐型か、バスケット型かを選びます。
ペーパーフィルターを選ぶ際は目の詰まり具合もポイントです。煎りたてのコーヒーには目の粗い「ヨーロピアンタイプ」が適しており、やや鮮度が落ちて、お湯の保持力が弱くなったコーヒーには、目が詰まり気味の「レギュラータイプ」を使用すると一定の時間お湯に浸したことになるので味や香りが出ます。また、ペーパーフィルターには「白い漂白タイプ」のものと「茶色の無漂白タイプ」の2色見かけることがあると思いますが、何が違うのでしょうか。最近はエコロジカルな面が重視され、主に木材で作られていて、科学的な処理をしない茶色の無漂白タイプのペーパーフィルターが多く流通しているように思いますが、このタイプは紙のにおいや味がコーヒーに移りやすいようです。なので味にこだわるという方は漂白タイプの白を選ぶのだそうです。茶色の無漂白タイプでも、ペーパーフィルターを袋から出して少し広げて置いておくか、コーヒー豆を入れる前に、いったん湯通しすると紙のにおいが軽減するそうです。また、確実に美味しいコーヒーを淹れるためには、ペーパーフィルターに折り目をつけてドリッパーとの密着性を均一にすることも重要です。まず、フィルターの側面の折りしろを折り、側面と互い違いになるように底の折りしろを折ります。このように折ったペーパーフィルターを、少し押し付けるようにしてドリッパー内にセットすると安定して淹れることができます。ちなみに、折り目が少ない方が雑味が出ていってしまうことがないという点から、円錐型タイプが人気だそうです。
■4大メーカのメリタ、カリタ、ハリオ、コーノ
違いのポイントは形状です。
メリタ
メリタ(Melitta)は、ドイツに本社を置くコーヒー機器の総合メーカーです。コーヒーファンの間では当たり前の存在であるペーパードリップシステム(ろ紙でコーヒー粉をこしてコーヒーを抽出する方式)は、1908年、ドイツの都市ドレスデンに住むメリタ・ベンツによって考案されました。メリタ式の特徴は扇型の一つ穴です。蒸らしの後に杯数分の目盛りまで一度に注ぐだけなのでだれでも簡単に同じ入れ方を行うことができます。
カリタ
株式会社カリタ(Kalita Co.,Ltd.)は、横浜市神奈川区に本社を置くコーヒー機器総合メーカーです。自社ブランド製品の製造販売の他、日本国外製品の輸入業務も手掛けています。メリタ社とは無関係であり、漢字表記は「刈田」です。社名はドイツ語の「Kaffee(コーヒー)」と「Filter(フィルター)」が由来となっているそうです。カリタ式の特徴は、扇型の3つ穴です。 蒸らしの後に数回にわけて注湯します。注ぐ早さで抽出スピードをコントロールする必要があります。カリタのドリッパーは三つ穴。雑味がでる前に、美味しさだけをドリップするのが特徴です。
ハリオ
HARIO株式会社は、東京都中央区日本橋富沢町に本社をおく日本の耐熱ガラスメーカーであり、国内唯一の耐熱ガラス工場保有メーカーです。ハリオ式の特徴は、円錐形の一つ穴(スパイラルリブ)です。 ネルドリップのおいしさとペーパードリップの手軽さを両立し、注湯の速度で味を変えられるのが特徴です。外側のスパイラルリブが空気を外に逃してくれるので粉の膨らみを邪魔しません。「V60ドリッパー」はハリオの代表的ドリッパーです。2007年度グッドデザイン賞を受賞し、「円すい形」が、しっかり旨みを抽出します。
コーノ
コーノ式は、円錐形の一つ穴(底リブ)です。 こちらもハリオ同様に湯がドリッパーにたまりにくく、注湯の速度で味を変えられるのが特徴です。定番のホワイト、ブラック、チョコレートだけでなく、様々なカラー展開をしています。
メリタの歴史
メリタ100年の歩みは、そのままペーパードリップの歴史といえます。当時、家庭でのコーヒー抽出は布や金網によるもので、手間がかかる上に不衛生であったり、粉がカップに入ってしまったりと、「誰でも手軽においしいコーヒー」というわけにはいきませんでした。1908年、ドイツのドレスデンに住むメリタ・ベンツは「もっと手軽においしいコーヒーをいれて、最愛の夫に飲ませてあげたい。」夫を想う深い愛情から、小さな穴をいくつか開けた真鍮製の容器(後のフィルター)に1枚のろ紙とコーヒー粉をのせ、お湯を注ぐ方法を考え出しました。この方法なら、コーヒー粉がカップに入ることもなく、ゴミ捨ても簡単。しかも余計な雑味をろ紙が吸うので味もおいしくなったのです。これが、世界で最初のペーパー・ドリップシステムの誕生でした。同じ年、このメリタ・ベンツのアイデアだけを資本に「M.Benz」が設立されました。アパートの一室に設けられた事務所で、たった4名で生産と営業を行い、小さなストアなどでペーパードリップシステムを紹介し、評判は瞬く間にドイツ全土に拡がりました。1912年には本格的な生産を始め、発注に生産が追いつかなくなったメリタは、現在の工場があるドイツ北西の街、ミンデンに移転します。たった一人の女性がはじめたビジネスが、世界規模の会社へと成長をはじめたのです。 彼女の情熱は息子のホルスト・ベンツに引き継がれました。もっと使いやすいシステムにならないかと改良に挑んだ彼は、現在のような円錐形で溝の付いたフィルターとペーパーを完成させ、1937年、ドイツで特許を取得します。
ホルスト・ベンツが最初に開発したフィルターの抽出口には8つの穴が開いていました。8つ穴のフィルターでつくるコーヒーの味に満足しなかった彼は、フィルター内でのお湯の流れやコーヒー抽出メカニズムの研究を繰り返し行い、フィルターの形状はもちろん、傾斜角度から溝の数など丹念に検討を重ねて、1960年代に現在の1つ穴フィルターを生み出しました。以来、ペーパードリップシステムの理想型としてメリタに引き継がれています。ドリップのスピードが一定なので、だれが抽出しても深い味わいと豊かなアロマが楽しめます。 ペーパー自体も、おいしいコーヒーを抽出するため、そして環境志向へと改良されました。1937年に円錐型のフィルターが発表された際に、それまでポットの底に敷いていたため丸い形をしていたペーパーは現在の扇型になります。1997年には、ペーパーに無数の小さな穴を開けて香りをいっそう引き出す「アロマジック」シリーズを発表するなど、積極的に改良に取り組み続け、100年の歳月をかけて、その完成度を高めてきました。
カリタの歴史
カリタ(Kalita)は、1958年に東京の日本橋で創業された日本のコーヒーメーカーの会社です。現在は神奈川県横浜市に本社をおいています。カリタは喫茶店ブームの波に乗り業務用コーヒー機器を製造販売し、その後は家庭用のコーヒー機器やコーヒーフィルターも販売し有名になり、
日本のコーヒー文化の草分け的存在といえます。家庭用無漂白ペーパーフィルターは、このカリタがどこよりも先駆けて開発し販売しました。ドリッパーも有名で、カリタ式というコーヒーの淹れ方もあります。カリタは、ドイツ語の「Kaffee(コーヒー)」と「Flter(フィルター)」の組み合わせた造語によってつけられました。よく似た名前のコーヒーメーカーとして「メリタ」がありますが、こちらはドイツのコーヒーメーカーで、まったく別の会社になります。
「カリタ式」とは、カリタ独自の三つ穴構造ドリッパーとペーパーフィルターを組み合わせた抽出方法のことです。特徴としては、扇形のドリッパーとコーヒーを抽出する穴が3つあるということです。内側は深めのリブになっています。このリブのおかげで、コーヒーとドリッパーの接する部分が少なく済み、お湯が順調に落ちるようになっています。細口のケトルでゆっくりと安定してお湯を注ぐこと、何回かにお湯を分けて注ぐことが、上手に淹れられるコツだそうです。これはカリタの、お湯をコーヒー豆に浸透・通過させて抽出するという考えに基づいたものです。抽出が早いことであっさりとしたコーヒーが出来上がるとのことです。カリタが扱う製品は、ペーパーフィルターとドリッパーだけではありません。ハンドドリップ・コーヒーミル・コーヒーメーカーはもちろんのこと、マグカップやランチョンマット、エプロンなどのオリジナルグッズも取り扱っており幅広い商品を展開しています。また、創業当初からある業務用製品の取り扱いは、現在でも続いています。カリタは機能性だけでなく、そのデザイン性が高いことも支持される理由の一つでもあります。コーヒーを淹れる機器というだけではなく、インテリアの一つとして、存在感を示すことができます。また、コーヒーメーカーの種類が豊富で、業務用から個人用まで幅広く展開しています。そのため自分に合った1台を見つけやすいということからも、支持される要因となっています。
ハリオの歴史
ハリオは1921年創業で100年近くもの歴史がある企業です。ハリオも日本発の企業なのです。独特な存在感で海外の企業だと勘違いしている方も多いようです。もともとは耐熱ガラスの加工を主とした開発・研究を行っていました。現在では世界で知れ渡る大手コーヒー器具メーカーとなっています。耐熱ガラスの技術を活かして、コーヒー関連だけでなく、ティー関連器具、電子レンジ用調理器具などのキッチンウェアからアロマ、ペット用品と幅広く展開しています。コーヒー関連に絞って紹介するとなると世界中で愛用されているドリッパー「V60」が有名です。V60は円錐型で大きな一つ穴、さらに渦を巻くようなリブの形が特徴的です。一般家庭だけでなく世界中のバリスタにも愛用されるドリッパーなのです。さらにハリオはドリップポット・ミル・サーバー・スケール・水出し珈琲ポットなど身近なコーヒー器具は全て揃えられるといっても過言ではないほど、豊富な製品を提供しています。
「HARIO V60」が、米国の新しいコーヒーの潮流「サードウェーブ」のシーンに欠かせない器具になっているのをご存じでしょうか。サンフランシスコのカフェでバリスタがV60を使っているのを見かけて、なぜ使っているのか尋ねると、「日本製は使いやすくて最高だからね」という答えや、「形がクールだよ」という答えが返ってくる。「理由? そんなものないよ、これがスタンダードなんだから」という答えも多かった。世界標準となっているHARIOのV60。特にレッドカラーは人気です。2010年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップで優勝したマイケル・フィリップスが演目中にV60を使用したこと、シカゴの焙煎所インテリジェンシアがたくさんの赤いV60を使ってコーヒーを提供するビデオが広まったこともあり、HARIOは日本をベースとするガラスメーカーながら、コーヒー器具の販売は海外比率が半分以上となっています。プロも認めるハンドドリップ用の器具の1つとして、HARIO V60ブランドは世界に羽ばたいているのです。
HARIO V60 ドリップスケール
ハンドドリップは変数の多い作業なのです。使用する器具、豆の量、挽き方、お湯の温度、お湯の量、注ぐ早さとドリップ時間などが複雑に関係するため、下手だと分かっても、どこを改善すれば良いのか分からなかったのです。裏を返せば、その変数をなくすか、計測して改善可能にすることで、ドリップは上手くなるはずです。そのための道具として生み出されたのが、HARIO V60 ドリップスケールです。この道具は、HARIOの海外ユーザーとの議論の中で、ドリップのレシピの再現性を高めたい、というリクエストにニーズを感じて、製品化したといいます。本体には重さを量るスケールと、同じ画面の中にタイマーが備わっています。これ1台で、豆の量、注いだ湯量、経過時間を計測することができるようになるのです。つまり、時間経過を含む、ドリップのレシピを再現する、あるいは再現に向けて練習することができるようになる。ドリップの最適化、すなわちドリップのハックを可能にする道具なのです。例えば、浅煎りの豆をすっきりと飲みたいということで、「300ccのお湯に対して豆25g、2分30秒でドリップする」というレシピが与えられたとします。何の道具もなしにこのレシピを毎回再現することはなかなか難しいはず。闇雲にやっておいしく淹れられればその日は良いが、翌日も同じようにおいしく仕上がるかどうかは分からないからです。なお、レシピは焙煎豆によって違うので、味の好みによって豆の量を調節することもできます。
まずスケールで豆を量り、中挽きでグラインドする。あらかじめペーパーフィルターをセットしてお湯を注ぎ入れ、そのお湯を捨てる。豆をセットして
右のボタンでスケールをゼロに戻し、左のボタンでタイマーをスタートさせる。まずはやかんから、豆全体を蒸らすように湯を垂らす。30秒から40秒ののち、甘い香りが漂い始めたところで、ゆっくりとドリップを始める。はじめは豆の表面と時間・重さの表示の間を、視線が行ったり来たりしながらの慎重な作業に、緊張が走る。だんだんお湯を垂らす腕の角度にも慣れ、良いペース配分でドリップを進めることができるようになっていきます。
コーノの歴史
コーヒー器具の売り場に行くと置いてあるのが、KONO名門ドリッパーです。1,000円以上する価格と「名門」という名から、どうしても玄人向けと手を出しづらいドリッパーではないでしょうか。しかし実はドリップを楽しみたいという方には、玄人や素人を問わず使うと楽しいドリッパーでもあります。通常みなさんが「KONO(コーノ)」と呼ぶ企業、本来の名は「コーヒーサイフオン株式會社」と言うのです。KONOは創業者の河野さんの名前から来てるそうで、いわば通称といったところです。そしてKONOと言えば、世界のコーヒーを扱う人々の賞賛を受けるクオリティで有名です。だから大きな会社かなと思うと、実はそうではないのです。“街中のコーヒー屋さん”といった趣のある建物で煙突があり、なんとコーヒー豆を焙煎して販売しているのです。会社名からわかる通り、実は初めはサイフォンの会社だったのです。今日の日本で使われているコーヒーサイフォンを完成させ、また日本で初めてコーヒーサイフォンを発売したことでも知られています。円錐形ドリッパーというと、どうしても昨今のサードウェーブの流れの中でHARIO V60ドリッパーという印象が強いでしょう。しかし何とKONOのドリッパーが元祖で、1973年に発売の長い歴史を持っています。しかも発売まで5年掛けて研究に研究を重ねて出来上がったドリッパーです。科学技術が飛躍的に進歩した今日においても、一目置かれる存在であるところからも、研究の成果と凄さを感じることが出来ます。円錐形のドリッパーという特性上、満遍なく注ぐのが容易な点がポイントです。台形のドリッパーだと一人分の少ない粉だと表面が長細い楕円になり、上手く注ぐのが難しいのです。しかし円錐形だとコーヒー粉の表面が円形になるため、均一に注ぎやすいところは意外なメリットです。また円錐形のドリッパーは、底部に大きな穴が開いていてコーヒー液が溜まりません。例えばメリタ・アロマフィルターのような、お湯を溜めることを前提としたドリッパーは、速かろうが遅かろうが味への影響は少ないです。しかし円錐形のドリッパーはお湯が溜まらないため、「お湯の注ぐ速度=コーヒー粉を通過する時間」となります。
この違いは、メリタやカリタがお湯の溜まる「浸漬式」で、KONOやHARIOがお湯の通り抜ける「透過式」と呼ばれる理由です。同じドリッパーでも実は抽出方法が異なるのです。KONOのドリッパーの最大の特徴が、下部だけにある“リブ”です。上部にリブがないことには理由があります。もし上部に隙間があると、そこから充分に抽出されないまま液体が横漏れしてしまいます。こうなると、しっかり抽出されていないコーヒーが混ざってしまいます。そこでリブをなくしてペーパーフィルターとドリッパーを密着させているのです。そうすると横漏れをせず下部まで流れて、しっかりと抽出することが出来るのです。この横漏れしない構造は、実は最も美味しいとも言われるネルドリップに近い味を出すことが出来るのです。ネルドリップはネルの最下部から抽出液が流れ出ます。リブを上部に設けないことで、ネルと同じく横漏れせず下までお湯が行き、しっかり抽出できる
ようにしているのです。
ペーパーフィルターの折り方
曲がる方の反対側に折ることで、安定します。
ペーパーフィルターの色、どちらが良いか
コーヒー用のペーパーフィルターには、2種類の色が存在します。真っ白な『漂白』と、パルプ色の『未晒し・未漂白』です。未晒しの方は紙の香りがコーヒーにも若干残るということですが、これはあくまでかなり意識した場合にのみ違いがあるレベルですので、通常は気にならないと思います。あとは単純に『漂白』している状態が気になる方もいらっしゃるかと思いますので、その点にも触れておきます。ペーパーフィルターの漂白は、『酸素』を使用している場合が多く、いわゆる『塩素系漂白剤』のような刺激が強いものが残っているということはありません。ですので、基本的な安全面では安心できるかと思います。上述した通り今回の検証では違いをわかりやすくするために、フィルターに湯通しをせず、コーヒーを抽出しているため、未晒しの香りが僅かに残る結果になりました。しかしながら、それを回避する方法が実は非常に単純で、抽出前にフィルターをお湯で洗うように湯通ししてしまえば、紙の香りはほとんどしなくなります。漂白のフィルターも、どうしても安全面で気になるという場合には、同じように湯通しして、残留している(かもしれない)漂白剤を(気分的に)流してしまいましょう。また、紙は周囲の匂いを吸収しやすいため、開封後はジップ付きの保存袋で保管することをおすすめします。
ペーパーフィルターの種類
ペーパーフィルターはドリッパーの形状から、台形型と円錐型の2つの種類に分けられます。それぞれに特徴があり、使い分けることでさらにコーヒーを楽しむことができます。
台形型ペーパーフィルターとは
1つ穴のメリタ式や、3つ穴のカリタ式などのドリッパー用として使われています。台形型のウェーブタイプのペーパーフィルターは、側面に液状のひだがあります。これがあることで、コーヒー粉にムラなくお湯を注ぐことが出来ます。そのため安定したコーヒーを味わうことが出来るのです。
台形型のペーパーフィルターの場合は、側面と下の2箇所を折る必要があります。下の部分を折る際は谷折りにし、側面を折る際には山折りにしなければいけません。接合部を折って強度を保つことによって、しっかりと安定してセットすることが出来ます。また、台形型のウェーブタイプのペーパーフィルターの特徴は、フィルターが波打っていることです。底が平らになっていて、お湯を注ぐときにブレてもしっかりとコーヒー粉全体に馴染んでくれるという特徴があります。ドリップの際に出る雑味を吸着してくれるため、安定したコーヒを味わうことも出来ます。
円錐型ペーパーフィルターとは
ハリオV60、コーノなどのドリッパー用として使われています。ドリッパーの形を円錐形にすることで、コーヒー粉の層が厚くなります。余分な油分を吸収する働きがあるので、すっきりとしたコーヒーを味わうことが出来ます。また、注がれたお湯が中心に向かって流れることでコーヒー粉に長く触れるため、コーヒーの成分を、より多く抽出することができます。円錐形のペーパーフィルターの場合は、接合部を1箇所だけ折れば良いため、手前は省けます。
サイズを合わせる
ドリッパーによってサイズが違うので、サイズに合わせてペーパーフィルターを選ぶ必要があります。使おうと思えば、多少違うサイズでも使えるかもしれませんが、ちゃんとサイズが合ったペーパーフィルターを使った方が、バランスの良い抽出ができます。
メーカーを合わせる
メーカーはドリッパーに合わせてペーパーを開発することも多いので、できれば同じメーカーのものを選ぶといいかと思います。そういう製品の方が、最適なドリップになるように開発されているからです。
ペーパーフィルターの色による種類分け
酸素漂白フィルター
白色のペーパーフィルター。昔は塩素漂白だったため危険性が指摘されましたが、現在は酸素を使っての漂白なので、安全かつ人体への影響も心配いりません。リグニンを効率的に除去するため時間がかからず、コストが安いことも最大の魅力です。漂白することにより、リグニンという木の香り成分が取り除かれており、木のにおいや味がコーヒーに移りにくいです。
みさらし(無漂白)フィルター
茶色いペーパーフィルターです。漂白する代わりに長時間水に浸して作っています。無漂白のため、フィルターにリグニンという木の香りの成分が残っており、木のにおいや味がコーヒーに移りやすいです。みさらしフィルターのメリットは、環境に優しく、価格もお手頃という点です。
ペーパーフィルターの種類と特徴まとめ
ペーパーフィルターといっても、台形型と円錐形では淹れ方や特徴、コーヒーの味も変わってきます。また、漂白フィルター、無漂白フィルターどちらのペーパーフィルターを使用するかによっても、コーヒーの香りや味わいが変わってきます。それぞれのペーパーフィルターの特徴を知って、自分好みのドリップスタイルを見つけてみてはいかがでしょうか。
ペーパーフィルターにお湯はかけない
ペーパーにお湯はかけないでください。昔は「紙の匂いがするからお湯をかける」というのが主流でしたが、最近の有名メーカー製のペーパーに限って言えば、酸素漂白なので紙の匂いがするペーパーはなくなりました。もしどうしても紙の匂いが気になる場合は、ペーパーにお湯をかけるよりも、使っているペーパーフィルターを有名メーカー製のペーパーに変えたほうが効果的です。お湯をかけないほうが良い理由は「リブを活かす」ためです。「リブ」というのは、ドリッパーに刻んである山のことです。ハリオのドリッパーには高い山がラセン状に刻んであります。これが抽出の時に重要な役割をはたすのです。コーヒーにお湯を注ぐとガスが発生して粉が勢い良く膨らむんですが、上からだけしか抜けない状態だと大きな泡(カニ泡と呼びます)がでて、蒸らしが不安定になります。紙を濡らさず乾いたままだと、リブに支えられて隙間があるので下からもガス抜きができて、理想的な状態が保ちやすいんです。とりわけ、ハリオ式はラセン状に掘られた深いリブが特徴ですので、わざわざ濡らしてドリッパーに密着させてリブを潰してしまうと、せっかくのリブの意味がなくなります。ドリッパーの機能を活かすために、ペーパーとドリッパーの間にリブの溝を確保してやるのがお勧めです。蒸らしの後の1投目は、真ん中で2拍止めて、中心にしっかり注いでからラセン状に外に回して注いでください。その時のコツは、「ペーパーにお湯をかけない」です。中心から丁寧にお湯を注いでゆくと、お湯を注いでいるところの外側にコーヒーの粉の堤ができます。この堤(盛り上がった部分)があることによって、すべてのお湯がコーヒーを通ってゆき、コーヒーのフィルターのようなものが一層出来上がります。ペーパーに直接お湯をかけると、堤が切れて浸透圧の低いところが出来ますので、そこからコーヒーを通らず直接落ちてゆくお湯が多くなり、均一な抽出ができなくなります。外周にコーヒーの層を作るのが、抽出のコツです。味にも違いがあるようです。実験した方によると、フィルターを濡らした場合は苦味が抽出されず、まろやかになるそうです。苦味が嫌いな方や避けたい時間帯などは濡らし効果があるかもしれません。
■金属フィルター
コーヒーオイルはご存知でしょうか、コーヒーオイルとはコーヒー豆に含まれる油分です。一般的なペーパーフィルターによる抽出方法ではこれらはほとんどすべて濾しとられてしまいます。その分、コーヒー豆の本来の味わいがよくわかり、とても透明感のある味わいになるのが特徴です。
それに対し、フレンチプレスや金属フィルターを利用することによってコーヒ―オイルの味わいを楽しむことができます。コーヒーの油分が加わることで、とてもまろやかでペーパーフィルターとはまた違った味わいを楽しむことができます。つまり、ダイレクト抽出は豆の鮮度が最も重要な抽出方法と言えます。これを行う際は、新鮮な状態、とりわけ焙煎から7日ぐらいのコーヒーを使用することをお勧めします。金属フィルター・ドリップはコーヒー本来のうまみ成分をもつオイルをしっかり出すことができる抽出方法です。
スペシャルティコーヒーのすっきりとしたフルーティーな味わいを楽しむことができます。
■ネルドリップ
「ネルドリップ」とは、布ドリップとも言われるように、フランネルという織物の種類のひとつを使用した抽出方法です。ネルフィルターはペーパーフィルターより太い繊維が集まってできており、使用回数が増えるほど、ネルにコーヒーの粗脂肪などの成分が付着し、湯とコーヒー粉との接触時間が長くなるため、ペーパードリップよりはコーヒーの抽出液が濃くなる(コクが出る)傾向にあります。また、抽出されたコーヒー液の可溶性固形分の粒子がペーパーフィルターに比べ小さくなるので、舌触りの滑らかなコーヒーになります。これらが、ネルドリップならではの味の特長です。
ネルドリップの裏表と美味しさのワケ
起毛部分の面が裏か表か、正解は、どちらでもOK
少しでも美味しいコーヒーを淹れたいと頑張っている方に人気なのがネルドリップです。よく聞かれることが、「裏表のどちらを内側にして使用したらいいか」ということです。コーヒーの抽出で使われるネルとは、「フランネル」で作られていますが、概ね片面が起毛してる織物になっています。
この≪起毛部分≫が、コーヒーの細かい粉を支えて布目に詰まるのを防いでくれる役目があります。したがって、 起毛がある面を内側にして使うのが正しい!と断言したいのですが、老舗のコーヒー店主には、起毛面を外側にして使うという方も多いのです。その理由は、起毛部分に粉が入り込み目詰まりで、抽出のタイミングがとりにくくなるという理由のようです。つまり利点とされてることが、欠点にもつながるということなのです。また、目詰まり下粉を取り除くために洗い流すのに、結構苦労するようです。そして、どちらの面を内側に使っても≪ろ過能力≫には、それほど大差がないという実験結果もあるようです。個人的には『起毛部分を外側にして使う』方が一般的かと思います。なぜ、ネルドリップは美味しいのか、それは、ペーパーで抽出するよりもネルの場合のほうが繊維組織の密度が高いことから、コーヒー液に含まれている可溶性の固形分子を取り除くことが出来て、舌触りがなめらかな感じになり、ゆっくり抽出されることで旨み成分が十分得られ、コクのあるコーヒーに出来上がることなのです。 以前は、ネルドリップで大量にコーヒーを抽出するのが一般的でした。しかし、ネルドリップで大量にまとめていれると、時間が経ってしまったときに、温め直して飲む必要がありました。このような背景から、1959年に、1杯からドリップができる、ペーパードリップが誕生しました。 現在では、ネルドリップでも1杯ずつ抽出できる、小さいネルも販売されています。
ネルドリップでいれたコーヒーの味とは
ネルドリップは、まったりとした口当たりがあり、飲みごたえの満足感が高い事が特徴とされています。また味わいにほんのりとした「甘み」が感じられるのも特徴です。これはネルドリップのネルが、ペーパードリップに比べて目が粗いため、「コーヒーオイル(油分)」が抽出されている事が理由です。一方でペーパーフィルターは、比較的「スッキリ」「クリア」な味わいになります。これは、ペーパーフィルターが紙製のフィルターを使用して抽出をするため、コーヒーオイルを吸収しているからと言われています。 ネルドリップを使うことの醍醐味は、「手間」をかけて抽出する事です。
紙製のフィルターであれば「使い捨てができる」という手軽さから、60年代以降は、ペーパードリップが浸透していきました。一方でネルドリップは、ネルを繰り返し使用する事から、水洗いや保管に手間がかかるため少数派になってきました。 しかし、その「手間」こそが「おいしさの秘訣」として、一部のコーヒー愛好家から支持を得ています。手間をかけて、ドリップをする事で得られる味わいは、ペーパードリップとはまた異なった趣があります。またネルドリップ特有の「滑らかな舌触り」と甘みのある味わいは、そのコーヒー豆の魅力を最大限抽出できるとして、人気が高いのも事実です。これこそがネルドリップが、「最もおいしい抽出方法」と呼ばれる所以でもあります。
ネルの下準備
1.ネルが新品の場合はコーヒー粉と煮る
新品の場合は、まずぬるま湯でしっかりと「糊気」を落とします。布が浸かるくらいのお水を入れた鍋に(目安として水が500ccの場合はコーヒー粉5gくらい)コーヒー粉を入れ、沸騰したら弱火にして、沸かない程度に15~20分間煮ます。この方法で新品のネルにコーヒーの成分をなじませます。
2.水洗い
煮込み終わった後は、鍋から取り出して、コーヒー粉が取れるまで流水で洗います。新品でない場合は、冷水に保管している布を取り出し流水で洗います。しっかりと水洗いができたら、水気がなくなるまで絞ります。 高い温度で洗うと、ネルに残ったコーヒーの油脂分が不快な香りになる事があります。温度が高くなると布にしみ込んだ成分が溶け出してくるためです。コーヒーは香り物なので、布自体に香りがあると、味に影響を及ぼしてしまう可能性があるからです。
3.水気がなくなるまで絞る
水洗いができたら、水気がなくなるまでしっかり絞ります。3~4回、繰り返してください。ネルの起毛面が「毛羽立っているか」どうかに注目します。寝ている状態だと「絞りが足りない」状態。絞りが足りないと抽出時のお湯の温度が下がるため、抽出効率が悪くなり、香りや味わいに影響します。 絞り方は、少し毛羽立っている方を外側にして絞リます。ネルの厚みのある部分は、水が溜まりやすいため、特にしっかりと絞ります。
ネルドリップへのこだわり
お湯をドバドバと注いではいけません。まずはスポイトでお湯をポタポタと垂らすようにして、マメ全体に少しずつお湯を含ませます。お湯を注ぐのではなく、垂らしながら全体に含ませる、という感覚です。この時の注意点は、この時点では下からコーヒーが出て来てはいけないということです。ところがここで掛けるお湯の量が少ないとこれまたダメなんです。全体にキッチリとお湯が行き渡るようにするんです。全体にと言うのは、豆の表面だけではなく、ネルドリッパーの下の方のマメにもチャンとお湯が届くということです。これはネルドリップだとすぐに分かります。ここでペーパードリップとネルドリップの違いが出ます。ペーパーフィルターを使ったドリップだと、この「マメのどのあたりまでお湯が届いたのか」が分かりません。ペーパーをドリッパーから一度外すか、透明なドリッパーを使わない限り、下に落ちてくるまで分かりません。下に落ちた時にはもう遅い、だからネルドリップを使っているという人も多いのです。マメにお湯が行き渡ったら、ここでじっくりとマメを蒸らします。蒸らすというのは良く聞くんですが、何がどうなったら蒸らしが完了するのでしょうか、それはこの状態でネルドリップに耳を近づけるんです。そうすると、マメからプチプチ、ブチブチ、プツプツというような音が聞こえるはずです。この音が景気よく鳴っている間は蒸らしが終わっていないのです。その場合にはこのプチプチ音が小さくなるか聞こえなくなるまで待ってください。2人前の分量だと1分くらいは待つ感じです。そうすると音が聞こえなくなります。
■エスプレッソ
高い圧力をかけてコーヒーを抽出する方法です。 自然の浸透圧で抽出するドリップ方式に比べ、少量の豆で効率良くコーヒーを抽出することができます。20世紀初頭にイタリア・ミラノで発明され、今やイタリアでCaffe(コーヒー)と言えばエスプレッソを指すまでに至りました。近年になって先進国を中心にファッショナブルな飲み物として広まっています。
エスプレッソの飲み方は、デミタス カップと呼ばれる肉厚で小ぶりな陶製のカップを使い、30cc程度の抽出液に3~5g、多い人は10gもの砂糖(グラニュー糖)を入れて飲みます。液量は70℃程度のやや「ぬるめ」、3~4口でサッと飲み干し、その後の余韻をゆっくりと楽しむのが流儀です。
イタリアにはBar(バール)と呼ばれる簡易型の喫茶店が無数に存在し、日本円にして1杯100円そこそこでエスプレッソを楽しむことができるのです。典型的なバールのスタイルは立ち飲み式で、着席の場合は価格が2~3倍になるとのこと、メニューはエスプレッソ、カプチーノ、マッキャートなどオーソドックスなエスプレッソ系メニューと簡単な菓子やパン、夕方からはアルコール類と乾き物や調理を施さないおつまみも提供されます。バールはイタリア人の生活に密着しており、1日に何度も立ち寄るのです。
イタリアン エスプレッソとアメリカ(日本)系エスプレッソ
<焙煎>
イタリア系 → シティ ロースト or フル シティ ロースト程度
アメリカ(日本)系 → イタリアン ロースト
<ブレンド>
イタリア系 → アラビカ種を主体に、ロブスタ種をブレンド
アメリカ(日本)系 → アラビカ種100%
エスプレッソの世界では、ロブスタ種よりも高級なアラビカ種を使った豆の方が良い豆というのは間違いです。
<味・量>
イタリア系 → 少量で砂糖をいっぱい入れる、苦くない
日本 → 濃くて苦いのでミルクや砂糖で味付け、少量では物足りず通常カップサイズ
おいしいエスプレッソの見分け方(五大要素)
■クレマ
エスプレッソの表面に浮かぶキメ細かく厚い「泡」。グラニュー糖をのせてみる。
■アロマ
飲む前に立ち上る初香。甘くふくよかに香り、コゲ臭や(鼻にツンとくる)酸化臭が無い
■マウス フィール
口に含んだ時に、しっかり残る骨太のボディ。たっぷりの砂糖にも負けない。
■テイスト
飲んだ時、口の中に広がる味わい深い香り、雑味やエグ味が無く、すっきりとしている。
■アフター テイスト
苦味、甘み、コクのバランスが良く、心地よい後味が長時間続く。最も重要なポイント
おいしいエスプレッソを出すためのポイント
1.初期設定
メッシュ(挽きの細かさ)、粉量、液量の設定
信頼できる技術者に設定してもらう。7gの豆を使い、1杯あたり25~30秒で抽出するのが基本。
2.豆の管理
徹底して豆を酸化させないことが重要、密封して冷暗所で保存。冷蔵・冷凍保存する場合は必ず常温に戻してから使用。
3.オペレーション
品質管理、品質の均一化、カップは必ず温める。エスプレッソは特に温度が下がりやすいので、提供するタイミングに注意する。
4.メンテナンス
毎日のマシン清掃、営業終了後は必ずマシン清掃を行う。
5.チェック方法
・はちみつが落ちるように「とろっ」と落ちるか
・ボタンを押して3~5秒後に最初の一滴が落ち、プラス20~25秒で抽出が完了するか
・良いクレマが出ているか。グラニュー糖がのるか。かき混ぜてもクレマが元に戻るか
・おいしいエスプレッソの5大要素を満たしているか
イタリア流のおいしい飲み方とは
コーヒーの本場イタリアでは、驚くべきことにストレートで飲まず、小さいティースプーンを使って1杯から1杯半ほど砂糖を入れるのがスタンダードだそうです。エスプレッソは抽出された時点では未完成の絵と同じ状態、そこに最後の一筆を入れて完成させるのは、あなた自身なのです。
その一筆がエスプレッソではスプーン一杯の砂糖に当たる訳です。砂糖を加えることによって、コーヒー本来の旨味を殺さず、深みとまろやかさを、よりいっそう引き出すことができ、アロマを際立たせる効果があるのだそうです。 「通ならブラックで…」なんて言葉は日本でよく聞きますが、おいしさを十分に味わえない飲み方だったんです。 イタリアでは人により千差万別ですが、あのデミタスカップに砂糖を3~4杯入れて飲む人や、1~2杯入れて混ぜる人、混ぜずに飲んで最後にスプーンで砂糖をすくって食べる人、しっかり混ぜる人、半分だけ溶かす人と、人によって様々です。
飲んだ後、底に溜まった砂糖をスプーンで食べるのが普通で、正真正銘のイタリア式エスプレッソマナーでもあります。 本来の楽しみとは、最初にアロマを感じながら1口。 2口目で苦みと酸味を舌に感じ、3口目で甘みと香りの余韻を味わうのが、エスプレッソの本来の飲み方です。要は、この3つの手順を踏むことでエスプレッソの美味しさを十二分に体感できるということです。
量が少ない理由
それは抽出方法に関係します。ドリップ式と違い機械で圧力をかけて急速に抽出しますが、量が多くなると、できあがるまでに時間がかかり過ぎてえぐ味や雑味が強くなります。量は少ないですが、濃度が濃いことで飲み終わったあとのアフター テイストが続きます。エスプレッソは30cc程度の飲み物です。入れたてを、冷めないいうちに3~4口でスーッと飲み、アフター テイストを楽しみます。「よいコーヒーとは悪魔のように黒く地獄のように熱く天使のように純粋でそして恋のように甘い」これは、コーヒー好きなら誰しも知っていると言われるほど有名な、シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールという人が残した言葉です。フランス革命期かのナポレオンも一目置いた政治家で美食家でもあった彼が理想のコーヒーについて語った言葉です。これは一説にはエスプレッソについて語ったものだと言われています。
■サイフォン
サイフォンの原理とは
サイフォンとはギリシア語で「チューブ、管」という意味であり、隙間のない管を利用して、液体をある地点から目的地まで、途中出発地点より高い地点を通って導く装置であり、このメカニズムをサイフォンの原理と呼びます。 サイフォンの原理は、出発点・到着点の高低差によって生じるエネルギーによって起こる現象であり、大気圧や重力が原因だと言われています。コーヒーサイフォンは、高低差によってのエネルギーだけでなく、熱の力が関わっているのです。
特長
サイフォン式で入れるコーヒーの特徴は、風味や香りにブレが生じにくいことです。 抽出の際にただよう強いサイフォンコーヒーの香りは、コーヒーが苦手な方さえも魅了する力を持っています。サイフォンという器具の最大の特徴は、やはりその風貌でしょう。飲むだけでなく、コーヒーを入れている間も視覚的に楽しませてくれるがサイフォンという器具の特徴なのです。そのお洒落な雰囲気からか、老若男女を問わずとても人気があります。ただし、最近は、なかなかお店でお目にかかる機会がないかも知れません。残念ながら、サイフォン式でコーヒーを入れるお店は、年々減少傾向にあるからです。しかし、今でもサイフォンという器具に魅了されている方は、後を絶ちません。それだけ、他のコーヒー器具にはない魅力があるからでしょう。サイフォン式の構造特徴は、フラスコのようなガラス容器の下から熱を加え、コーヒーエキスを抽出する器具ということです。
サイフォン式は、容器中の「気体の圧力」によってお湯を下から上へと持ち上げます。すると、上の容器にセットしたコーヒー豆がお湯に浸され、その結果コーヒーエキスが抽出されるのです。以前の日本では、ドリップ式と並ぶほど人気の高い抽出方法でした。そのため、一昔前にはサイフォン全盛期と呼ばれる時代が存在していたほどです。当時の喫茶店のカウンターには、必ずと言っていいほどサイフォンがズラリと並んでいました。古き良き日本の喫茶店の独特の雰囲気を醸し出していたのがサイフォンなのです。サイフォン式は、ドリップ式よりも人を選ばず、安定したコーヒーが抽出できるため、誰でも本格的なコーヒーの風味や香りが楽しめます。さらに、科学の実験器具のようなサイフォンの抽出工程は、コーヒーが飲めない方や、お子さんでも視覚的に楽しむことができるでしょう。視覚・嗅覚・味覚など・・・人間の五感全てでコーヒーを感じられることも、サイフォンの大きな特徴と言えるのです。
サイフォンコーヒーは、コーヒー粉をお湯に浸してから、布のフィルターで漉して作ります。 つまり、基本的にはペーパードリップとあまり変わらないのです。 違うところといえば、コーヒー粉にお湯をかけるか、コーヒー粉をお湯に浸すかの違いでしかありません。細かな味の違いは確かにありますが、味わいはほとんどといって良いほど変わらないです。 具体的な違いについてですが、サイフォンコーヒーの方が味が濃く、ドリップコーヒーの方が香りが高いです。 これは製法の違いからくるもので、コーヒー粉がお湯に浸されている分、抽出が進んで濃厚な味わいになり、同時に熱によって香りが飛んでしまっているのです。 他にも、サイフォンコーヒーは布のフィルターを使用しているので、ネルドリップ同様に味が粉っぽくなく澄んだコーヒーがいれられます。 しかし、一番決定的な違いは、サイフォンコーヒーをいれるには必要な熟練度は意外と低く、かつ常に安定した味わいのコーヒーをいれられることでしょう。 そして、サイフォンの器具は室内のインテリアとしてもかなり良い空間を作ってくれます。 このように記述すると、サイフォンコーヒーって良いものだと感じるでしょうが、やはり、大変なところも有ります。 取り合えず、もっとも大きいのが器具の代金です。 4~5人用の器具で10,000円以上も必要になるため、セールで売られているような980円のペーパードリップセット(ドリッパー、サーバー、コーヒースプーン+ペーパー数枚)と比べて高価なことがわかります。 また、加熱をアルコールランプで行う必要があります。 昔理科の実験で
使用したあのアルコールランプです。 そのため、コーヒーを入れるのに、燃料用アルコールを用意しておかなければならないのです。 当然、このアルコールの入ったアルコールランプを安全な場所に保管しておく必要もあります。 さらに、コーヒーをいれるのに、ドリップコーヒーよりも手間がかかります。 アルコールランプの火力でフラスコのお湯(又は水)を沸騰させ、上部のロートに押し上げるまでに結構な時間がかかるため、お湯が沸いたらすぐに抽出してすぐに飲むことのできるドリップコーヒーと比べて不便さは否めません。 他にも、フィルターが布であるため、フィルター保存についてはネルドリップ同様の、冷水に浸して保存、違う銘柄コーヒーをいれると前の豆の味と香りの影響を受けるという2点が多少面倒です。 つまり、ペーパードリップの方が手軽で、香りの高いコーヒーが楽しめるということです。
では、何故サイフォンコーヒーなのでしょうか。 これには前述の2つの理由、味が濃厚なことと、安定したコーヒーが楽しめることがあげられるでしょう。 味が濃い分、さまざまな銘柄の持つ特有の癖が、ドリップコーヒーよりも強く出ます。 つまり、各銘柄の違いをより大きな違いとして楽しむことができるのです。 例えば、キリマンジャロの酸味と甘味のバランスの良さとか、エチオピア・モカの酸味を従えた濃厚なコクとか、マンデリンの苦味で引き締まった滑らかなコク等が、口の中でより大きく感じとることができるのです。 濃厚な味わいが欲しいのであれば、エスプレッソコーヒーを押される方もいるでしょう。 しかし、ご存知の通りエスプレッソコーヒーでは味と香りが、ドリップコーヒーとは全く違ってしまいます。 コーヒーの持つ香りと味わいを楽しむのであれば、基本はドリップコーヒーで良いでしょう。 しかし、サイフォンコーヒーを飲んでみてください。今まで気付きにくかった各銘柄のコーヒーが持つ特有の味わいを発見できるかもしれません。
ポコポコと音を立てながらコーヒーを抽出するサイフォンコーヒー。コーヒーの抽出方法にはさまざまな種類がありますが、その中でも最もロマンチックで演出効果の高い方法のひとつと言えます。この演出効果こそが、サイフォンコーヒーの最大の魅力なのです。サイフォンで淹れることでコーヒーの豆本来が持つ風味を素直に引き出し、クリアな味わいを楽しむことができます。酸味や香りの高い豆を使うのがお勧めです。また、ドリップコーヒーの場合は、淹れる人の技術によって味が左右されることがあります。しかしサイフォンの場合は、いったん使い方を覚えてしまえば、コーヒー初心者の方でも安定した味を出せるのも魅力なのです。サイフォンで美味しいコーヒーを淹れるために、豆の挽き方にも拘りたいものです。ペーパードリップなどでは一般に市販されているグラニュー糖程度の「細中挽き」を使うことが多いが、サイフォン用におすすめなのは「中挽き」です。サイフォンの他には、布ドリップ(ネルドリップ)にも適しています。
適したコーヒーと分量
1杯分の目安は、コーヒーの粉が、中細挽きで10g、中挽きなら15g、粗挽きなら18g程度。お湯の量は160ccです。
○専用スプーン すり切りで8g
・2カップ → 2杯 16g
・3カップ → 3杯 24g
・4カップ → 4杯 32g
粉の粒度は、細かいほどコーヒーが持つ成分がお湯に溶け込みやすいので、味は濃くなります。逆に粗いとお湯に成分が溶け込むまで時間がかかるので、あっさりとした味になります。
【おいしい淹れ方】
1.フィルターを準備する
まず、金属製の濾過器に、円形に型抜かれたネルフィルターをセットします。初めて使うネルフィルターは、濾過器にセットした状態でコーヒー液で
20分程度煮て、付着している糊や汚れなどを取り除き、コーヒーとなじませてから使います。
2.お湯を沸かす
フラスコに杯数分のお湯を入れ、乾いた布巾で外側についた水滴をよく拭いてからビームヒーターなどの熱源にかけて沸かします。
3.フィルターをセットする
フィルターに一度お湯を通して温めてから、乾いた布巾などで水気を切り、フィルターが冷えないうちに、温めておいたロートにセットします。この時、ロートの管の先端部に、濾過器のスプリングにある留め金をしっかりと引っかけ、濾過器がロートの真ん中からズレないよう竹ベラなどで
しっかり調整します。
4.コーヒーの粉を入れる
ロートに、杯数分のコーヒーの粉を入れます。
5.フラスコの湯の沸騰を確認する
ロートを完全に差し込む前に、濾過器の先から垂れているボールチェーンをゆっくりお湯に沈めます。お湯が完全に沸騰しているときは、泡が次々とチェーンを伝って上ってきます。フラスコを火にかけたままでいきなりロートを差し込むと、突沸(湯が吹き出す)することもあるので注意しましょう。
6.ロートを差し込んで1回目の攪拌
完全に沸騰していることを確認したらロートをしっかりと差し込みます。お湯がロートの方に上昇してきたら、竹べらでコーヒーの粉とお湯をなじませるように、素早く円を描くように数回攪拌(かくはん)します。
7.弱火で放置し抽出する
「弱火」にして、15~45秒をめやすにしてそのまま置き、抽出します。抽出時間は、コーヒーの焙煎度や挽き方によっても変わってきますが、長すぎると雑味が出てしまうので、1分を超えないように注意してください。ここで、上から泡、コーヒーの粉、液体の3層になっていると良い状態です。
8.火を消して2回目の攪拌
抽出時間が過ぎたら火を消し、濾過をスムーズに行うために2回目の攪拌(かくはん)をします。もう一度、竹べらでロートの中を軽くかきまぜ、ロートの中のコーヒー液がフラスコへ落下するのを待ち、完全に落ちきったらできあがりです。上のロートをはずして、コーヒーをカップに注ぎます。
コーヒーがなかなか落ちてこない時は、布巾でフラスコを包むなどして、フラスコの温度を下げるとよいでしょう。また、いったんフラスコに落ちたコーヒーがロート側に戻ってしまう「バックロート」という現象が起きると、コーヒーの味に悪影響が出ますので、注意しましょう。
9.完成確認
抽出後のコーヒーのかすも見てみましょう。ドーム上に盛り上がった表面に、コーヒーの雑味の原因となる細かな泡があり、下にいくほど粗めのかすの層ができているとき、クリアな味わいのコーヒーが抽出されている目安になります。
■フレンチプレス
おいしいコーヒーが手軽に淹れられることもあって、コーヒープレス(フレンチプレス)が最近人気です。金属フィルターを使用することによってコーヒーオイルと微粉(ザラザラ感)を抽出します。「粉が口の中に残って甘みが出る」「飲み込んだあとも口の中に残る」「味が持続しやすい」など、
コーヒープレスを使用されている方は多数おられます。ペーパーフィルターや布フィルターとは全く違った味わいになるコーヒープレスのおいしさ、そのコーヒープレスを使った基本的で簡単な入れ方を紹介します。
コーヒープレスの長所、短所について、コーヒープレスのいいところは、簡単さです。粉を入れてお湯を注ぐ(その逆も)だけですから、失敗が少なくおいしいコーヒーを作ることができます。また、コーヒーオイルを抽出するのに適しています。過去にゴールドフィルターというコーヒードリッパーが流行りましたが、そのゴールドフィルターの謳い文句もコーヒーオイルの抽出ができることでした。ただ、オイルの性質上、水よりも軽いですから、コーヒープレスのように粉をしたに押し下げて抽出する物のほうが、コーヒーオイルを確実に感じることができます。
コーヒープレスの短所といえば、長所でも挙げたオイル分と微粉です。ペーパーフィルターなどの透明感のあるすっきりした味に慣れていて、コーヒーオイルや微粉の粉っぽさが口に残るのが苦手な方にはお勧めできません。またコーヒー液の濃度が出しにくいところも短所なので、濃いコーヒーを飲みたいという方にも合わないでしょう。コーヒープレスで濃度を出そうとするなら、意図的にコーヒー粉を攪拌するか、長い時間浸しておくことです。ただコーヒー粉を撹拌させると、きれいな成分を維持しながら濃度を出すことは難しくなります。
フレンチプレスで淹れるコーヒーの特徴
1.コーヒー(豆)の味がダイレクトに出る
2.コーヒー(豆)の旨味成分はオイル部分に多くある。その油分をフレンチプレスは抽出できる
3.コーヒーの計量、時間の管理を行えば初心者でもおいしいコーヒーを作れる
コーヒーの旨味をダイレクトに出すのがフレンチプレスです。この旨味成分が多く含まれているオイル部分は、ハンドドリップではペーパーフィルターが漉してしまって楽しむことが出来ないのです。実はフレンチプレスは旨みを出すというのは不正確な表現で、正確にはフレンチプレスはコーヒー(豆)の味をダイレクトに出すのです。つまりおいしいコーヒーならおいしく、まずいコーヒーならまずく抽出されることになります。フレンチプレスでおいしいコーヒーを飲むのに絶対に外せない条件、それは「おいしいコーヒー豆を挽いて使うこと」です。可能であれば焙煎したばかりのコーヒーを使って抽出することです。
■フレンチプレスの淹れ方
準備するもの
・コーヒープレス装置
・コーヒー豆(プレス容量 350ml=16g、500ml=24g、1000ml=42g)濃い味がお好みなら1~3g程度増やしてください。
・熱湯(沸騰直後の熱湯)
・タイマー(4分計測)
手順1
必要なものを準備し、コーヒーの粉をフレンチプレスに入れます。
手順2
熱湯を注ぎ始めると同時に、4分の計測開始。一湯目は、プレスの半分くらいまで注ぎます。熱湯は、粉全体にお湯が行き渡るように注ぎます。ガスと粉と液体の3層になっています(ガス量は豆や状態により異なります)
手順3
タイマーが30秒ほど経過したら、二湯目を注ぎます。ビーカーの上から1.5cmくらい下まで注ぐ(目安)、注ぎ終えたら蓋をしてタイマーの4分が経過するのを待ちます。待っている間はプランジャーを下げません。4分たったら、プランジャーをゆっくり押し下げます。カップに注いで、できあがりです。フレンチプレスで抽出されたコーヒーには、香りをもつコーヒーオイル(油分)までしっかりと抽出されます。
フレンチプレスを使うときに気をつけておくべきこと
フレンチプレスで美味しくコーヒーを淹れるために気をつけたいことがいくつかあります。
1.お湯は沸かしたてのものを使う
コーヒーの風味は、基本的に温度の高いお湯を使うことでよく抽出されます。コーヒーのフレーバーをしっかりと抽出するため、沸かしたての100℃に近い高温のお湯を使うことをお勧めしています。
2.コーヒーの量・お湯の量・抽出時間はきちんと計測する
コーヒーの量が多すぎたり少なすぎたりしてしまうと、コーヒーの風味が出すぎてしまったり、また出しきれなかったりしてしまいます。スケールでぴったりと量らなくとも「フレンチプレス付属のスクープで○杯」とある程度決めて、コーヒーを抽出してください。お湯の量も同様です。「膨らみが収まったコーヒー豆が、フレンチプレスのこれくらいの高さになるまでお湯を入れる」という目安を毎回守ったほうが、コーヒーの味を安定して美味しく淹れることができます。そして最後に抽出時間は4分です。昔から言われているだけあって、フレンチプレスでコーヒーを淹れるのに適切な時間です。お好みであっさり目にしたいときは3分、しっかり目にしたいときは5分、という調節方法もありますが、まずは4分をきっちり計って淹れてみることをお勧めします。
3.掃除は念入りに
フレンチプレスでコーヒーを抽出したら、できるだけ早めに残った粉を捨て、フィルターを洗って下さい。簡単な方法は、フィルター部分を少し緩めて粉を捨てて軽く洗ったフレンチプレスにぬるま湯を6分目くらいまで注ぎ、洗剤をひとたらししてフタをして、上下にジャバジャバプランジャーを動かす方法です。コーヒーのオイル成分がついたままだと、それが酸化して匂いの元になってしまうので、フィルターについたオイルやコーヒーの粉はしっかりと落とすようにして下さい。また、乾かしておく場合にも、すぐにプランジャーをサーバーにしまわず、ひっくり返してフィルターを乾かしておくと衛生的に管理できるので覚えておきましょう。
4.気になる豆はフレンチプレスで
コーヒーの味をチェックする際はカッピングで行うことが通常ですが、プライベートではフレンチプレスを利用しています。どんな味かをチェックしてから、ドリップやエアロプレスで淹れて比べてみます。それほどに、フレンチプレスの抽出スタイルはコーヒーの持っている味をしっかりと出しきれるのです。
コーヒープレス / フレンチプレスでよくある質問
Q コーヒープレスで使うお湯は何℃ですか?
A コーヒープレスは、一般的には90℃~100℃のお湯を使用することが多いです。100℃のお湯の場合でも、ミディアムローストやハイローストなどの浅煎りレベルで、なおかつ生豆の品質がよいスペシャリティコーヒーやCOEなどであれば、全体のボリューム感と香りをいかすことができます。
Q コーヒー粉はどれぐらいの粗さにしたらいいですか
A コーヒープレスの場合はコーヒー粉は中粗挽き~粗挽きを使用します。濃い目に飲みたいなら中粗挽き、すっきり飲みたいなら粗挽きです。
Q コーヒープレスに使うコーヒー豆(粉)の量は
A コーヒープレスでのグラム数の目安は、15~20g(350cc用の場合)です。濃い目に飲みたいなら粉を多めにして20g、薄い目に飲みたいなら粉を少なくして15gを使います。ひとつの目安なので、お好みに応じて調節してください。
Q コーヒープレスだと粉っぽさがでるのは、なぜですか
A コーヒープレスで抽出した場合に粉っぽくなるのは、金属フィルターで粉を濾して抽出するためです。金属のフィルターで抽出した場合には、コーヒー豆の微粉が出て、必ず粉っぽくなってしまいます。粉っぽさが苦手な方は、ペーパーフィルターやネル(布)フィルターをお勧めします。金属フィルターで抽出された場合には、カップの底にはこのような粉が必ず溜まってしまいます。これがコーヒープレスでの粉っぽさの正体です。
Q フレンチプレス」という名称の由来は
A 名称の由来は、1933年にイタリアで考案されたプレス式コーヒーが、第2次世界大戦後、フランス、パリのカフェで広く使われるようになり、ヨーロッパ全体に広まりまったことでフレンチプレスと呼ばれるようになったとする説や、フランスでプランジャーポットと呼ばれる器具がコーヒーを
淹れるために開発され、その後プランジャーポットを用いて淹れることをフレンチプレスと呼ぶようになったとの説があります。
■エアロプレス
2005年に登場した空気圧抽出方法です。使いこなせば最強に頼もしい抽出ツールとなるエアロプレス、注射器のような形状が印象的なこのツールで淹れたコーヒーは、酸味と甘みのバランスが良く、スッキリした後味になります。エアロプレスで美味しく淹れるコツは、プランジャーを一定のスピードで押し切ることです。このスピードが一定に保てると、中の圧力が一定になり、美味しく仕上がります。また、手順が多いので、抽出に慣れる必要があります。慣れてくると好みの味にコントロールできるようになる抽出器具ですので、抽出時間、湯量、押し切るタイミングなどを変えながら、自分好みのコーヒーを楽しんでみてください。
・チャンバーのメモリ①→②→③→④は、1メモリ約60cc
・専用スプーンは1杯で17g
正攻法
・チャンバーにコーヒー粉を入れる。1杯12g
・チャンバーをサーバーの上にセット
・お湯を数量いれて粉を蒸らす
・お湯150ccを投入
・20秒ほど蒸して、10回ほどパドルでかき混ぜる ⇒ すでにサーバーへ落ちている
・さらに40秒蒸らす
・プランジャーをセットして、20~30秒かけて一定の圧力で押し下げる
インヴァート(反転) ※濃厚抽出
・プランジャーの上にチャンバーを乗せてセット ※通常使用の逆セット
・チャンバーにコーヒー粉を入れる。専用スプーンで1杯17g
・60ccのお湯を投入し、撹拌する ⇒ 第一撹拌
・さらに120ccのお湯を投入し撹拌する ⇒ 第二撹拌
・濾過機を付けて、サーバーを当てて、ひっくり返す
・プランジャーを押し下げる。
・お湯を投入してから終わるまでの時間は1分
14.蒸らしと抽出成分
14.蒸らしと抽出成分
コーヒー粉に湯を注ぎ、コーヒーを淹れますが、湯は基本的に2回分けて注ぎます。最初は、“蒸らし”のために。次は、コーヒーの成分を“抽出”するためです。
最初の湯を注ぐ時の注意点
①湯をドリッパーの真ん中に、小さな円(100円玉程度)を描くように注ぎます。中心を狙って注ぎ、ペーパーフィルターを濡らさないようにします。ペーパーを濡らすと、水のバリアが出来て、コーヒーの脂成分が上手く抽出できません。ペーパーにコーヒーの脂分が最初に触れるように、この段階で濡らさないようにしましょう。粉の近くから優しくお湯を注げば、難しくありません。
②注ぐお湯は少量です。目安はサーバーにポタポタと数滴落ちる程度です。
③“蒸らし”の段階では、注いだ湯がコーヒー粉全体に行き渡ります。それと同時にコーヒーの粉が膨らんできます。
④膨らむのはコーヒー豆に元々含まれている炭酸ガスが放出されるためです。このガスが十分に放出されると、コーヒー豆に湯の通り道ができ、豆の成分が湯の中に抽出されるようになります。
蒸らしとはなんのためにあるのか
コーヒー抽出における「蒸らし」工程は、豆と湯を馴染ませるための大事な作業です。コーヒー豆の表面は、目に見えない小さな穴がたくさん空いており、初めから一気に湯を注いでしまうとその穴から空気が抜けず、十分な抽出ができなくなってしまいます。そのため、先に少量の湯で馴染ませ、豆表面の小さな穴にもしっかりと湯が行きわたるようにする作業が「蒸らし」です。
蒸らし時間で味が変わる
40秒蒸らし(標準)
フルーティで華やかなフレーバー、甘さを伴う酸味、長く続く後味など、しっかりバランスが取れている。冷めても美味しい。
20秒蒸らし(標準より短い)
フレーバーや甘さが出切っておらず、スッキリしすぎている。その分、酸味だけが際立って感じる。冷めてくると渋みも強く感じる。
60秒蒸らし(標準より長い)
雑味と渋みが強く出てしまい、その分甘さが感じにくい。冷めてくると苦味を強く感じ、雑味と混ざってさらに重く感じる。
なぜ蒸らし時間の差で味が変化するのか
その要因ですが、豆と湯の馴染み具合の差に加え、抽出前半で出てくる成分と、抽出後半で出てくる成分が異なることも、コーヒーの味に違いが出た要因だと推察します。味や風味は主に前半で抽出されていますが、そこで止めてしまうと、バランスが悪いコーヒーになってしまいます。そこに後半で抽出されるわずかな風味や渋みといった要素が加わることで、バランスが取れているのです。
20秒蒸らしの場合、味や風味などのポジティブな成分が出やすい抽出前半に多くの湯を注いでいるため、後半のバランスを取るための要素が少なくなってしまい、60秒蒸らしの場合は、前半の成分が出るタイミングで湯量が不足し、後半のバランサーが多すぎたことで逆にバランスが取れなくなってしまったという結果です。
ハンドドリップは蒸らしの時点で決まる
結論から言うと、ハンドドリップは蒸らしの時点で味が決まります。蒸らしはオムレツ作りでのオリーブオイルの役割に例えられます。オリーブオイルは、料理にオリーブの風味を加えてくれますが、そもそもは油です。フライパンに卵ではなく最初にオリーブオイルを敷くのは、フライパンに卵が引っ付かないように、料理の「準備」をするためです。油を敷かずにフライパンに卵を投入したらどうなるか、卵がへばり付いてしまい、ひっくり返らなくてオムレツは失敗します。
上手い蒸らしをしよう
「蒸らし=ハンドドリップをする準備」なので、蒸らしを上手に行えば、上手なドリップに一歩近づくことになります。具体的には「粉全体をしっかり膨らませる蒸らし」です。その理由は、土手が作りやすいからです。土手を作るとドリッパーの中心をお湯が落ちていきます。そうすると、そこに灰汁が発生します。この灰汁がしっかりと雑味をキャッチし、サーバーに落とさないようにしてくれます。土手を作らないと、美味しいコーヒーは入れにくいのです。また、土手がないとお湯がひたひたになってしまい、ドリッパー内で粉が暴れてしまいます。暴れ(対流)によって「渋み」や「えぐみ」などの雑味が抽出されてしまうのです。
蒸らしをすると豆の良し悪しが分かる
蒸らしをするとドリップがしやすくなるだけでなく、豆の良し悪しが分かるため、味に直結する大事な要素になります。結論からいうと、良い豆は蒸らしの時点で膨らみます。よい豆とはずばり新鮮な豆になります。焙煎してから日が経っていない焙煎豆です。焙煎したての豆はガスを多く含んでいます。湯を注ぐとそのガスが放出されて膨らむわけです。ところが、日が経つとガスがどんどん抜けていきます。日が経ってしまった焙煎豆は酸化しており、嫌な酸味を伴ったコーヒーになってしまいます。そして前述のとおり、粉全体が均等に膨らまないので、注いだお湯で粉がひたひたになってしまい、「決め手の土手」が上手く構築できません。(土手を作らないでドリップする方法もあるのですが、土手を作る基本的なドリップからまず学んでみてください)
◇抽出成分
コーヒードリップの抽出時に、最初に抽出されていくのが「酸味」「甘み」の成分です。そして抽出の中盤から後半にかけて「苦味」の成分が抽出されていきます。抽出が早く終わるほど苦味の成分は抽出されず、酸味を中心とした味覚のコーヒーが抽出されます。逆に時間を極端にかけて抽出すると「酸味」「甘み」を隠した「苦味・エグみ」という雑味中心の味覚に仕上がるというコントロールが可能になります。ペーパードリップは、目的の湯量に達したらドリッパー内にお湯が残っていても、落としきらずにはずします。これにより、雑味が無くスッキリしたコーヒーが楽しめます。
ドリップという抽出方法は、「おいしいトコロをカップに注いで、不味いところはドリッパーに置いていく」 という考え方を基本にしています。これは珈琲豆をお湯に浸したときに、どういうものが出てくるかという事に深く関係しています。この方法を探求したドリップ方法が、松屋式という抽出方法です。大雑把に言うと、4杯分のコーヒー豆を入れて、2杯分の抽出を行なう。その後、2杯分のお湯を足して4杯のコーヒーが出来上がり。と言った手法です。蛇足ですが、この方法は体にも良いと云われています。
コーヒーには沢山の成分が含まれます。旨味、苦み、甘み、酸味、渋み、えぐみ、雑味として説明致します。これらは水への「成分の溶けやすさ」に差があります。まず甘み、旨味はコーヒー豆から溶け出しやすい性質があるようです。ドリップの前半は、旨みや甘み・酸味が凝縮されて出てくるのです。ドリップの後半は、比較的溶けにくいコーヒーの雑味成分である、渋み・えぐみが溶け出します。過抽出。つまり、一カ所にお湯を過剰に注いでしまうのが、まずいコーヒーの元となると言われるのは、この点だと思われます。
適切な量の粉を使っても、まんべんなくお湯があたらなければ、部分的に粉が多すぎたり少なすぎたりと言った状態が起こってしまいます。
また、注ぐ温度が85℃を切ってしまうと、明らかに香り(アロマ)が弱くなると感じます。
蒸らしで使用する湯温は、93-95℃が理想
沸騰直後の湯では、抽出が加速してしまい、一定のドリップで味をコントロールするのは困難で、「苦味の強いコーヒー」が出来上がります。上記のようなコントロールや方法を組み合わせて、豆も色々な種類を試しても理論通りにいかないのがコーヒーでありハンドドリップの面白さでもあります。
コーヒーの抽出メカニズム
コーヒーの粉をマクロ的視点で覗くと、ハニカム構造(蜂の巣構造)をもっています。コーヒー豆一個分のハニカム構造面を広げた場合、テニスコート一面の面積に相当するそうです。この粉にお湯が当たると急に表面積が増えますので、気化(液体が気体に変わる事)します。お湯が粉に吸い込まれて水蒸気となることで、粉が膨らみます。このとき、湯温・湯量が適切ならば、粉の間で蒸気を融通し合うので、全体にお湯が回ります。この蒸気がハニカム構造の中に付着しているアロマオイルをとらえ、そこにさらにお湯を通すことで、コーヒーの風味成分を抽出することができ、薫り高いコーヒーになります。蒸らしのお湯が多すぎる場合、粉に余計な圧力が加わり、うまく膨らみません。また蒸らしの時に、もこもこ粉が盛り上がってくるのは、お湯の温度で珈琲豆に含まれる炭酸ガスが揮発し、豆の間に放出される為です。この現象は、コーヒー豆が新鮮な証拠です。お湯の温度によっても多少ふくらみ具合は異なります。(熱ければ、より早く・多くガスが放出される為、膨らみます)
また、膨らんで泡ができることによって、粉の間に隙間が出来てしまい、粉がお湯を保つ時間が変わってきます。
ここが、新鮮なコーヒーをドリップする難しさです。実際の抽出時の注意点は、「お湯を珈琲に乗せる」様にドリップする事。ジャバジャバと湯を入れてしまうと、コーヒー豆が、ドリッパーの中でグルグルと対流し暴れます。すると「渋み」や「えぐみ」などの雑味が抽出されてしまい不味い珈琲になってします。粉を動かさないのがポイントです。専用の細口ケトルを使用するのは、粉を動かさずゆっくりと入れる事が出来るのと、沸騰したお湯をケトルに移すと、93-95℃に瞬時に下がる為、待たずにドリップできるからです。
13. ストレート/ブレンド
13.ストレート、ブレンド
「ブレンド」と「ストレート」の違い
「ストレート」と「ブレンド」の違いを簡単に説明すると、ストレートとは、一つの産地(ブラジルやコロンビアなど)から収穫された単一産地のコーヒー豆を指します。「ブルーマウンテン」「モカ」「キリマンジャロ」などの銘柄が有名です。それに対してブレンドは、複数産地のコーヒー豆を合わせたものを指します。有名ホテルやコーヒー専門店で、「○○○ブレンド」などの屋号の名称をつけた銘柄を見かけます。 身近な食品で例えるなら、日本人の主食であるお米もストレート(単一米)とブレンド(ブレンド米)で分けられます。米屋さんの店主や、研究開発にあたるメーカーなどは、産地や配合の割り合いを変えてブレンドすることで思い通りの味を作ることができるそうです。単一米として有名な産地米よりおいしいブレンド米が存在しているのは、それぞれの特徴を活かしつつバランスよくまとめる技術があるからなのです。
■ストレート派、ブレンド派
コーヒーではストレートとブレンドどちらがおいしいのでしょうか。結論は、お米の話と同じで、どちらも美味いし、どちらもお勧めです。ストレートは単一産地なのでその産地ごとの特徴や個性、香りなどの豆本来の味が引き出され、完成したおいしさをダイレクトに堪能できます。ブレンドは、それぞれの豆の良いところや持ち味を活かしながら、数種類のコーヒー豆を合わせ、1種類の豆だけでは出せない複雑な味わいや、新しい味を作り出すことができます。コーヒーは飲み方や豆ひとつとっても味が変わる奥の深い飲物です。だからこそ、自分のお気に入りの味に出会えた時の感動を忘れられないのではないでしょうか。時にストレート派はブレンドを、ブレンド派はストレートを試してみることです。
ストレートコーヒーが美味しい代表的なコーヒー豆と特徴
豆本来の味をきちんと知りたいならば、ストレートコーヒーがおすすめです。まずはそれぞれの豆が持つ特徴を知ることです。代表的なコーヒー豆として「世界三大コーヒー」の「ブルーマウンテン」「キリマンジャロ」「ハワイコナ」、他を取り上げます。
・ブルーマウンテン
産地はカリブ海の島国ジャマイカです。その東側に連なるブルーマウンテン山脈の内側、ブルーマウンテンエリアで栽培される良質なコーヒーだけが「ブルーマウンテン」と呼ばれます。気品あふれる香り、しっとりとした甘味など調和のとれた味わいから「コーヒーの王様」と称されています。酸味、苦味、香り、コクなどバランスの良いコーヒーです。通常、コーヒー豆を出荷する際は麻袋に詰めますがブルーマウンテンは樽詰めで出荷され取扱いも特別です。
・キリマンジャロ
産地はアフリカ東部のタンザニアです。その北東部にそびえるアフリカ最高峰、キリマンジャロ山の斜面で栽培されます。海が隆起した海抜2000m級の高地で育ったため非常に個性的な味が出やすく、世界中に多くのファンがいます。グレープフルーツのような柑橘系の爽やかなフルーティーさで、心地よく甘酸っぱい酸味があるのが特徴です。取引されるときは「タンザニア」とも呼ばれます。
・ハワイコナ
産地はハワイ島の西側にあるコナ地区です。コナ地区は火山灰の影響を受けて栄養を蓄えた土壌、昼夜の寒暖差がある気温など、コーヒー栽培に適した条件がそろっているため良質な豆が育ちます。その生産量は極めて少なく、希少な高級品です。やわらかい酸味と豊かな香りが特徴で、レンゲや蜂蜜のような甘い風味も感じられます。
・モカ
産地はエチオピアでコーヒ発祥の地。エチオピアは木の実を食べて興奮するヤギを見たヤギ飼いカルディがコーヒーを発見したという逸話が残ります。エチオピアとイエメンで生産されるコーヒーは昔、イエメンの積み出し港であったモカ港に因み「モカ」と呼ばれています。標高1600~2200mの高地で昼夜の寒暖差が大きく、霜が発生するような気候風土で栽培されるモカはアフリカコーヒーを代表する存在です。味わいはグリーンアップルを思わせる青い果実で明るく軽やかなイメージの風味があります。
・マンデリン
産地はインドネシアのスマトラ州。トバ湖の南岸にあるエリアで火山性の独特な土壌により、エキゾチックな味わいになります。ミルキーでクリーミーな味わいと香りの中に、フルーティな甘酸っぱい甘みが楽しめる豊かなコクとバランスか取れた苦味が特徴です。味のごまかしがきかないストレートコーヒー名前の通り、1種類のコーヒー豆のみ使用したコーヒーのことです。味のごまかしがきかないため、ストレートでおいしく飲めるコーヒーは数少ないと言われていますが、ブルーマウンテンNo.1やキリマンジャロなど各国の最高級銘柄はストレートコーヒーにも適していると言われています。
シングルオリジンコーヒーの台頭
ストレートコーヒーは単一産地のコーヒーだと述べました。「ブラジル」「コロンビア」といった国や、「ブルーマウンテン」「キリマンジャロ」といったエリアのように生産地の名前がつけられています。それに対して、最近「シングルオリジンコーヒー」が注目を集めています。ストレートコーヒーは国やエリアだけでまとめられるため、誰がいつ、どんな場所で作ったコーヒーなのかわかりにくいという点があります。そこでシングルオリジンコーヒーは生産国やエリアに加え、収穫時期、生産者、豆の品種、精製方法などの単位で一銘柄とします。ワインと同じように考えたらわかりやすいのではないでしょうか。同じフランス産ワインでも、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュというように産地で分けることができます。コーヒーの場合、同じブラジルで生産されたものでも、農場ごとに土壌、日照時間、気温などが違います。生産者はその土地に合わせた品種と生育方法で栽培しているため、個性豊かなコーヒーが生まれるのです。国やエリアといった大きな単位のストレートコーヒーから、農場や生産者といった小さな単位のシングルオリジンコーヒーへと移りつつあります。
食の安全に対して関心が高まりつつある昨今、この流れは自然のように思います。生産者の顔と産地のストーリーが見えて、遠い国からやってきたコーヒーがなんだか身近に感じられます。
個性ある豆たちを組み合わせたブレンドコーヒー
豆の個性を組み合わせることで、味を安定させ好みの味を作り出したコーヒーのことです。昔は「ブレンド」と言うと質の悪い豆に上質な豆を混ぜて誤魔化すといったイメージもありましたが、今ではより良いコーヒーを作り出すためにブレンドされていることが多いと言われています。
ブレンドの仕方ですが、ブレンドをする豆たちの焙煎度はできるだけ揃えておき、豆の種類は3~4種類にすることがポイントです。これは、あまりたくさんの種類の豆をブレンドするとすべての個性がぶつかってしまい統一の取れない味になってしまうためです。中間的な味の豆を基本とし、その味に酸味や苦みをもつ個性ある豆を混ぜ合わせ調和のとれた味をつくり上げることが大切です。自分でブレンドをする際は、一度各々の味や風味をしっかりと記憶してからはじめましょう。ここでは、ブレンドによく使われるコーヒー豆の銘柄と特徴をご紹介します。
ブラジル サントスNo.2
香ばしさとさわやかな酸味が特徴のブラジル産の豆でブレンドコーヒーのベースに使われることがとても多い人気の高い豆です。ブラジルのコーヒーの等級ではNo.1は存在しないため、このNo.2が最高等級となっています。
コロンビア スプレモ
豊かな酸味とコクが特徴のとてもサイズの大きい豆です。甘みとコクのバランスが良いクセのないコーヒーになります。
ジャマイカ ブルーマウンテンNo.1
世界的に有名なジャマイカのブルーマウンテン。その中でも、大粒のものだけを選別したもの、最高品質のものがNo.1です。香りを飲む、と言われる程の優雅な香りと調和の取れた味わいはまさに「コーヒーの王様」です。
ハワイ コナ エクストラファンシー
ハワイの火山灰の土壌で栽培されるコナコーヒーの中でも最高級の豆で、ミネラル感に満ちており独特の酸味とあと味のほのかな甘味が特徴。バターのようなコクもあります。
■味の決め手、ローストの種類
コーヒーの焙煎は浅いほど酸味が不安定で変化しやすく、味が安定しません。日本では中炒りが主流となっていますが、嗜好の多様化と共に深炒りも市場に出回るようになりました。
浅煎り
・ライト…黄色がかった小麦色
・シナモン…シナモン色
中煎り
・ミディアム…栗色、色・香りは良好で、適度な苦味・酸味があります。
・ハイ…標準的な焙煎で、色・香は良好で、苦味がやや強く、少しの酸味があります。
・シティ…色・香りは良好で、苦味が強く、少しの酸味があります(シティとはニューヨークシティからきたものです)
■品種ごとの風味の特徴
以下に示すのは、おおよその風味の違いですが、それぞれの焙煎の度合いによって多少違ってきます。
●酸味の強い豆
アラビアモカ、グアテマラ、キリマンジャロ、コロンビア、ハワイコナ、メキシコ、エルサルバドル(高地産)、ケニア、コスタリカ(高地産)
●苦味の強い豆
マンデリン、インド、ジャワ、ウガンダ
●中庸の豆
ブラジルサントス、ホンジュラス、コスタリカ(低産地)
●甘味の多い豆
グァテマラ、コロンビア、ハイチ、メキシコ、ジャマイカ、ブルーマウンテン
●コクのある豆
ブルーマウンテン、グアテマラ、コロンビア、アラビアモカ、コスタリカ
●香気の高い豆
ブルーマウンテン、グアテマラ、コロンビア、アラビアモカ、ハワイコナ
■ブレンドの目的・方法
コーヒーの豆には、たくさんの種類がありますが、それぞれ個性があってその味も違います。このような持ち味の違うコーヒー豆を数種配合することによって単品の欠点を補い、味の調和をとることがコーヒーのブレンドの目的です。
ブレンドの方法
1 原則として相反する豆を選ぶ
酸味のコーヒーだけや苦味のコーヒーだけを配合するのでは、一つの味に片寄ってしまって、逆に癖が出過ぎてしまいます。
2 ブレンドの主体とする豆を決める
いずれか一つを主体にすることで、酸味や苦味などをほどよく調和して、ストレートでは出せない風味を作り出すことができます。
3 配合率はなるべく差をつける
配合率は7対3とか、5対3対2というように、なるべく差をつけたほうが効果的であり、比較的成功しやすいでしょう。
4 多種の配合は無意味
主体とする豆にあと2、3種特徴のある豆を配合すれば十分です。一般的なのは3種の配合で、少ない場合で2種、多くて6種ぐらいまでです。