日記

2023-09-21 11:10:00

2. コーヒー豆の産地と特徴について

2.コーヒー豆の産地と特徴について
植物にもいろいろ種類がありますが、コーヒーは育てるのに非常に難しい部類なのです。柿とか銀杏の木はあちらこちらで見かけますが、コーヒー豆の木は植物園でしか見たことがないと思います。つまり、コーヒー豆の木が育つには適切な環境が必要であり、その生産地固有の条件、そして味に直結する自然環境・風土があったのです。

■コーヒー豆をうまく栽培するための4つの条件(文献を参考に記述)
コーヒー豆の木が順調に育つには主に4つの条件が必要と言われており、それらの条件が満たされなければ、コーヒーの木を育てることはできません。


(1) コーヒー豆を栽培するには降水量が重要
コーヒー豆の木を上手に育てるには、当たり前ですが雨(水)が必要です。具体的には年間の降水量が1500mm〜2500mmと言われています。
日本の年間降水量が1700mmくらいです。ということは感覚的に日本よりちょっと雨が降るくらいの環境で育っていると思ってください。しかし、実はこの降水量ですが、ただ雨がいっぱい降ればいいわけではありません。コーヒー豆の木は繊細で手のかかるお子様だと思ってください。成長している時に雨がいっぱい降って、収穫する時に乾燥している必要があります。つまり、日本よりも少し雨が降って、雨季と乾季の2つが一定の間隔で存在しているエリアじゃないと育たないのです。


(2) コーヒー豆を栽培するには日照量が重要
コーヒー豆の木を上手に栽培する上で必要な2つ目の条件は日照量です。これも実は繊細であり日照量が強すぎても弱すぎてもダメなのです。
基本的にはコーヒー豆の木は日光を好むので、ある一定量の太陽の光が必要です。しかし、必要以上の太陽の光を浴びてしまうと紫外線の影響で、逆にへばってしまいます。そのために、実際のコーヒー豆の木が育っているエリアでは、コーヒー豆の木の横に身長が高い木を敢えて植えて、日差しを緩和して日陰を作る木を育てます。
この日陰を作るための木をシェイドツリーと言います。コーヒー豆の木をうまく育てるために敢えて近くに別の木を植えて日光を遮るような環境を整えています。


(3) コーヒー豆を栽培するには温度が重要
必要な3つ目の条件は温度です。温度については人間が快適と感じる温度に似ており平均気温は20度前後です。コーヒー豆の産地と聞くと、太陽が照りつける暑い場所をイメージする人も多いのですが、避暑地のような快適な温度の場所でしかコーヒー豆の木を育てることはできません。実際にコーヒー豆の産地に行ったことがある人の話では、日本の暑さよりも暮らしやすいとのことです。また、コーヒー豆の木は寒さに弱く、具体的には5度以下の低温がずっと続くと枯れてしまいます。昼と夜の温度差がある程度激しい地域が望ましいというのも特長です。


(4) コーヒー豆を栽培するには土壌が重要
コーヒー豆の木を栽培するのに必要な最後の条件が土壌です。当たり前のような話ですが、土壌は植物が育ち安い肥沃な土壌で、水はけが良いところがベストです。かつ土質が少し酸性の土壌がコーヒー豆の木には適しています。
肥沃な土壌を具体的に言うと、窒素とリン酸とカリウムを含んだ土壌です。
窒素の役割はコーヒー豆の木を大きく成長させることです。しかし窒素は逆にありすぎると虫が多く集まったり、病気になりやすくなったりするそうです。リン酸はコーヒーの花の開花とコーヒー豆の肝心な実を作るのに効果があります。そしてカリウムはコーヒー豆の木の根っこの成長に影響を与えます。
ちなみに、コーヒー豆の土壌は火山質の土壌が良いと言われています。有機物を多く含む火山灰の土壌は、コーヒー豆を成長させる上で重要になる先ほどあげた窒素、リン酸、カリウムが豊富に含まれており、かつ水はけが良いからです。
火山灰質の土壌はやわらかく、コーヒー豆の木の根っこが伸びやすく、栄養素を効率的に取れることもコーヒー豆の木がよく育つ理由なのではないかとも言われています。そのためにコーヒー豆の木の農園は標高の高い火山帯に多いのです。
しかしこの火山灰質の土壌も、火山が噴火した後の土壌だったらなんでもいいというわけではありません。火山灰質の土壌にも。石灰質土壌という栄養分の無い土壌と、火山性土壌という栄養分が含まれている土壌があります。当然ながら栄養のある火山性土壌である必要があります。


つまりコーヒー豆の木はコーヒーベルトで育つ
今まであげてきた、降水量、日照量、温度、土壌を満たすことができるエリアがどこかというと、それは赤道の前後付近です。具体的には北緯と南緯25度の範囲内と言われています。そしてこのエリアをコーヒーベルトと言います。
赤道付近だと考えると暑そうなイメージなのですが、コーヒー豆の木を育てるには温度が20度前後で快適な温度を必要とします。つまり熱帯付近の中でも山や高地である必要があるのです。暑い地域の中でも高い山で育てることで温度を下げることができます。実際に高い山で取れたコーヒー豆ほど味が美味しいと言われています。それは高い山では、昼と夜の温度差が大きくなり、コーヒー豆の実が引き締まって(栄養が蓄えられ)おいしくなるわけです。
また、コーヒー豆の木の絶対的な弱点が霜であり、霜の出るエリアでは基本的にはコーヒー豆の木を育てることができません。これら全ての条件を満たすコーヒーベルト付近の70か国でコーヒー豆は育てられています。
日本では沖縄や小笠原諸島でコーヒー豆が生産されています。高い山があるわけではなく、雨季と乾季もないので、本格的にコーヒー豆を育てるには大変だと言われています。

 

■コーヒー豆の木について
次にコーヒーの豆の木そのものについても触れてみます。


(1) コーヒー豆の木の正式名称は「コーヒーノキ」
コーヒー豆の木の正式名称は「コーヒーノキ」です。
誰が名づけたかは謎ですが、カタカナでコーヒーノキが正式名称です。アカネ科の常緑樹に属しており、そのまま野生で育てると10mくらいまで成長して伸びるそうですが、農園では収穫しやすいように1.5m〜2mに剪定されています。


(2) コーヒー豆の木は標高が高い方が高級
コーヒー豆の木は熱帯地方の高い山の中でよく育ちます。高い山とはどれくらいかと言うと、低いところで標高300m〜400mくらいです。しかし一般的に標高が1500mを超える産地が高級のコーヒー豆を栽培できると言われます。
交通網が発達したで、最近はある程度高いところでもコーヒー豆を収穫することができるようになりました。逆にそれを超えて標高が高すぎると霜が降りてくるのでコーヒーがうまく育ちません。しかし例外もあります。高級豆の代名詞でもあるジャマイカのブルーマウンテンのコーヒー豆は高い山で育てられていません。標高が高くなくても、降水量、日射量、気温、土壌の条件が合致すれば美味しいコーヒー豆を作ることができるのです。


 (3) コーヒー豆の木は収穫できるまで3年間かかる
コーヒーの木の成長には時間がかかり、ゼロからスタートすると収穫できるまでに3年かかると言われています。それまでの間も、コーヒー豆の木の健康状態をうまく維持する必要があります。コーヒー豆の実1つに対して葉っぱの枚数は3〜6枚くらいで、一本のコーヒー豆の木にできるコーヒー豆の実の数も決まっています。これはもともと吸収できる栄養の量が決まっているからです。木があまりにも大きくなるとコーヒー豆の実まで栄養がいきません。そのため何年かおきに枝などを刈り込み、適量になるようコントロールしています。

 

■コーヒー豆が取れる各エリアについて
コーヒー豆の木はコーヒーベルト付近で栽培されますが、具体的なエリアについて書きます。大きく分類するなら、南米エリア、中米・カリブ海エリア、中東・アフリカエリア、アジア・環太平洋エリアに分けられます。


(1) 南米エリアのコーヒー豆
コーヒー豆の産地を語る上で絶対に外せないのが、南米エリアです。理由はブラジルがコーヒー豆の生産において圧倒的に世界一だからです。コロンビアもコーヒー豆の産地として世界ではトップレベルであり、他にもベネズエラ、エクアドル、ペルー、ボリビアなどでコーヒー豆が作られています。世界一の生産量とだけあって、ブラジルではコーヒー農園の機械化なども進んでおり、大量のコーヒー豆が生産されています。


(2) 中米・カリブ海エリアのコーヒー豆
最高級コーヒー豆の代名詞としても使われているブルーマウンテンのコーヒー豆が取れるのがこの中米・カリブ海エリアです。その他にも高級と呼ばれるコーヒー豆が多く生産されています。メキシコは世界的にもコーヒー豆の産地として有名であり、カリブ海の島々でも地理的な面積が小さいものの、一定量のコーヒー豆が生産されています。


(3) 中東・アフリカエリアのコーヒー豆
中東やアフリカでも多くのコーヒー豆が生産されています。その中でも特にエチオピアとイエメンで生産されるモカは世界的に知名度の高い豆です。他にもタンザニアやケニアなどで取れるコーヒー豆はヨーロッパの人々に昔から愛されています。
そのコーヒー豆のほとんどは国内では消費されずに、換金作物として輸出されることでも知られています。


(4) アジア・環太平洋エリア
インドネシアは国内だけでもいくつもの種類のコーヒー豆があり、世界的なコーヒー豆の産地として知られています。他にもベトナムは近年生産量が急拡大しており、生産量で世界のトップレベルになっています。またハワイで取れるコナコーヒーは、高級コーヒー豆として多くの人から愛されています。


コーヒー豆の生産地を見分ける方法
市販のコーヒー豆からどうやってコーヒー豆の産地を見分けるのかを説明します。市販されているコーヒー豆はパッケージにその産地が書かれているので、直感的にわかるのですが、おしゃれなパッケージを採用しているメーカーでは、どこの国で取れた豆なのかわかりません。その場合は、裏側に貼ってある、商品の基本情報のシールを見てください。
シールに書かれているたくさんの項目の中に、生豆生産国名というものがあります。例えば「インドネシア」と表記されていれば、それはインドネシア産の豆です。また複数の国が書かれていることがあります。「ブラジル、コロンビア」と書かれていれば、それは複数の国で取れたコーヒー豆をミックスしてブレンドしたものです。

 

■コーヒー豆と大陸
同じ生産地でも環境・生育条件は異なるので味も異なるのですが、大きな特徴としてまとめられているものは以下となります。


中南米(アメリカ大陸)
エレガントな柑橘系の酸味を持つコーヒーを栽培するのが特性で、毎日飲んでも飽きがこず、 癖のないマイルドなコーヒーが特徴です。国による味の違いがわかりづらいと感じる事があるかと思いますが、飲み比べてみると、それぞれの産地の特徴が感じられ、繊細で高品質なコーヒー豆だという事を実感できます。


アジア大陸
ボディ感があり、癖が強く大地の様な力強いコーヒーが特徴です。コクや飲みごたえがあるコーヒー豆として紹介される事が多いようです。


アフリカ大陸
フレーバーの豊かなコーヒー豆を栽培しており、地域によりまったく違う香りや風味があり個性的な特性を持ちます。エチオピアやケニアは代表的なコーヒー豆で、豆の香りだけでもその産地が特定できるほど、香り高い芳香を放ちます。

この3大陸の特性を把握しておけば、アフリカ大陸のコーヒー(フレーバー感)は、休日の午後用に、アメリカ大陸のコーヒー(ストレート感)は日常用として飲むなど、時間や気分に合わせて選び、楽しむ事ができるのかもしれません。また、カフェでコーヒーを飲む時や、豆を買う時など、この3つの大陸の特性をイメージしながら選ぶことで楽しみも増えるかと思います。
有名な銘柄も補足しておきます。


1.北アメリカ大陸
<北米エリア>
・ハワイ(コナ)・・・強い酸味と甘い香り


<中米エリア> 
・メキシコ・・・・酸味と香りがともに適度で、やわらかい上品な味
・グァテマラ・・・甘い香り、上品な酸味、芳醇な風味
・エルサルバトル
・コスタリカ・・・芳醇な香りと適度な酸味が混ざりあい、上品な味
・パナマ(ゲイシャ種)・・・柑橘類やハーブティーを連想させる華やかな香り


<カリブ海>
・ジャマイカ(ブルマン)・・・すべてのコーヒーの良さをあわせ持つ、バランス良い
・キューバ(クリマン)・・・酸味と苦みのバランスがとれた上品な味が人気、最高級品
・ハイチ
・プエルトリコ


2.南アメリカ大陸
・ブラジル・・・雑味がなく中庸な味、香りが高く適度な酸味と苦味
・コロンビア・・・甘い香りとまるい酸味と、まろやかなコク
・ベネズエラ・・・軽い酸味とやや独特の苦み、そして適度な香り
・エクアドル
・ペルー


3.アフリカ大陸
・イエメン、エチオピア(モカ)・・・フルーツのような甘酸っぱい香りと、まろやかな酸味とコク
・ケニア・・・強い酸味が大きな特徴。キレがあり、後味もすっきり
・タンザニア(キリマン)・・・強い酸味と甘い香りと豊かなコクがあります。


4.アジア
・インドネシア(マンデリン)・・・コクのあるやわらかな苦味と、上品な風味
・インド
・カンボジア
・ニューギニア

 

■知っておきたい豆
・ブラジルNo2
コーヒーの基礎といわれる豆。バランスのとれた味。迷ったらこれで間違いなし。
控えめなブラジル人はNo1と言わないで(敢えて避けて)この名称となりました。


・モカマタリ
歌などでも有名な豆。上品な甘みと酸味がある。モカは色々と種類があるが、とりあえずこれは入門用


・マンデリン
苦味が強い豆としてよくあげられるのがこの豆。酸味が苦手だという人にはこれ。苦いのが好きならトラジャもオススメ。


・キリマンジャロ
独特の強い酸味があり、固定ファンも多い。苦手だという人もいるが一度は飲んでおくべき豆。


・コロンビアスプレモ
雑味が少なく、甘みとコクがある豆。輪郭ははっきりとしているがすっきり飲める。


・エメラルドマウンテン
缶コーヒーのエメマンとは別物。実はけっこうな高級品。甘みが強くブラックでも甘みを感じられる。苦味というより酸味系。


・ブルーマンマウンテン
ご存じNO1コーヒー豆。酸味、苦味、甘み、濃く、香りともにバランスが取れている。高いけれど一度は飲んでおきたい豆です。

 

・パナマ エスメラルダ農園 ゲイシャ

エスメラルダのゲイシャの特徴はスパイス感のある華やかなフレーバーとレモンのようなアシディティ、紅茶のような透き通ったクリーンカップ、およそ一般的なコーヒーとは一線を画すぶっ飛んだフレーバーです。レモネード、という言葉もしっくり来ます。「ゲイシャフレーバー」という言葉が生まれました。このフレーバーに欧米をはじめとしたスペシャルティコーヒーバイヤー達は虜になったというわけです。

スペシャルティコーヒーの場合、コーヒーの品種とコーヒーの品質には大きな相関関係は無いと考えられています。しかし原産地であるエチオピアやこのエスメラルダ・ゲイシャに限っては、その地域の微小気候(マイクロクライメイト)によって、独特なフレーバーを獲得しています。このエスメラルダ事件によって、ゲイシャは中米をはじめとする様々な産地で栽培されるようになりましたが、やはりこのエスメラルダ農園ほどのぶっ飛んだフレーバーを持つコーヒーは出てきていません。標高や気候の微妙な違いが影響しているのでしょう。

 

1