日記

2024-03-15 21:32:00

17. 抽出速度

17.抽出速度
■速度による風味の違い
コーヒーはデリケートな飲み物なので、抽出する早さによって、風味が変わってきます。当たり前の事ですが、早くお湯を注げば、その分、早く粉を通り抜けます。また、高い位置から注げば、重力の関係で落下速度が速くなり、勢いよくお湯が通り抜けるので、必然的に抽出速度が速くなります。10cmでも高さが変わると、抽出速度はかなり変わるのです。早い速度で抽出すると、酸味や甘味などの成分が抽出されやすく、遅い速度で抽出すると、苦味やコクなどの成分が抽出されやすくなります。極端な話、挽き方を粗くして早く注げば酸味中心の軽いコーヒーになり、挽き方を細かくして、ゆっくり注ぐと苦味の強い濃厚なコーヒーになるということです。

ペーパードリップで抽出速度に違いが出る要因は3点ほどあります。 豆の焙煎において、浅煎りより深煎りのほうが速く落ちます。 また、細挽きより粗挽きのほうが速く落ちます。 焙煎したて(新鮮なもの)より焙煎から時間の経ったものの方が速く落ちます。 一般的に珈琲の抽出時間は、3分間(イブリックは例外)を上限とします。時間が長くなると、雑味を引き出してしまいます。また速すぎると、甘みが充分に抽出できません。ペーパードリップの場合、この時間をコントロールするために、紙の目が詰まっていないヨーロピアン・タイプと目が詰まり気味のレギュラー・タイプ、その中間のタイプがあり、使い分けることで、3分間の抽出時間をコントロールします。湯を、ドリッパーの真ん中に、小さな円(100円玉程度)を描くように注ぐ。中心を狙って注ぎ、ペーパーフィルターを濡らさないようにしましょう。ペーパーを濡らすと、水のバリアが出来て、コーヒーの脂成分が上手く抽出できません。ペーパーにコーヒーの脂分が最初に触れるように、この段階で濡らさないようにしましょう。粉の近くから優しくお湯を注げば、難しくありません。注ぐお湯の分量は、少量です。目安はサーバーにポタポタと数滴落ちる程度です。


■ハリオ式/ひとつ穴
一般的な扇形のものと異なり、こちらは円錐型です。お湯が中心に向かって流れ、フィルターの下までぎっしり詰まったコーヒー粉の層をじっくりと通過するため、旨味(コーヒーオイル)をより多く抽出することができます。「ネルドリップに近い抽出ができる」と言われるのはこのためです。ネルは、使うたびに洗ったり、洗った後に乾かしすぎてはダメなど管理がなかなか大変です。ネルで淹れたような旨をペーパーフィルターで出せるのは嬉しいことです。お湯が中心に集まる秘密、もうひとつは内側に刻まれた螺旋状のリブ(凸部)です。ペーパーとドリッパーの間に少し空間をつくることで、蒸らしの際に空気がほどよく抜け、珈琲の粉がしっかりと膨らむという役目も果たしています。また、注目すべきポイントは、下に空いた大きめの穴、お湯が溜まらず流れるので、 ゆっくり注いで濃厚な味に、手早く注いでスッキリした味にと味わいに自在に変化をつけられます。

 

◆各工程の意味、重要性
蒸らし
コーヒー粉の表面を湯で湿らせて、しばらく置く状態のことです。主に、ペーパードリップやネルドリップで抽出し始める時に行います。 でも、早くコーヒーを飲みたいのに何でわざわざ蒸らすのでしょうか。
1)全体を均一に湿らせることで、偏った湯の通り道を作らず、均一に抽出できるようにするためです。 しっかり均一に蒸らすことができれば、抽出時に真ん中にだけお湯を注いでも、ちゃんと全体から抽出されます。
2)コーヒー粉が湿ることで膨張し、湯に触れる面積が増え、さらに湯が浸透しやすくなって成分がしっかりと抽出できます。 抽出時間が短いと、軽くてコクの足らない薄っぺらな味わいになり、逆に長すぎると、苦み・酸味が出過ぎてキツイ味わいになります。
では、どのくらい蒸らすと一番美味しいのでしょうか。
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蒸らし時間      味の特徴
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   0秒   軽くてコク・香りが少ない。
  30秒   コクと香りが出てくるが、やや軽め。
  60秒   コクと香りが出ていて、まろやかさと甘みあり。
  90秒   コクと香りが出ていて、苦み酸味がハッキリ。
 120秒   香りが少なく、味わいのバランスが崩れキツイ感じ。
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私は、「1分前後」が一番味わいとして完成度が高いように感じました。酸味・苦みのバランスも良く、それぞれの味が突出していません。甘みも一番強く感じられました。 そして、まろやかな口当たりで、喉ごしも雑味が残りません。 あくまでも、美味しい豆を「より」美味しくする手段なので、マズイ豆が美味しく変身することはありません。


■むらしと抽出の関係
どの書籍にも書かれている工程「蒸らし」、膨らまないのは鮮度が悪い証拠だと認識している方も多いかと思います。これは、コーヒーを効率よく抽出する為に蒸らしているのです。コーヒー豆は焙煎することによって、ハニカム構造といって蜂の巣のような六角形が連なる空洞ができ、体積が増えます。この空洞は、0.01mmほどの大きさで内部には焙煎によって発生した炭酸ガスが溜まっています。ここに1投目のお湯を注ぐこと(蒸らし)によって、内部では炭酸ガスが押し出され、空洞内にはお湯が滞留します。この時お湯はコーヒー成分を溶かしコーヒーエキスで満たされます。押し出された炭酸ガスによってモコモコと膨らみ、コーヒードームができるという仕組みです。30秒程蒸らすのは、この炭酸ガスの放出が落ち着くまでの時間からきています。そのため30秒というのは目安に過ぎず、実際に粉の動きを見てから2投目を注いだ方が良いです。
この空洞は焙煎が深いほど多く形成され、焙煎が浅いほど少なくなります。浅煎りと深煎りでは膨らみ方が違うのはその所以です。また、炭酸ガスは時間の経過と共に自然放出されるので、古い豆だと膨らみません。


■抽出の仕組み
「浸透圧」という言葉をご存知でしょうか、濃度の違う溶液が均一濃度になろうとする圧力のことです。コーヒーエキスはこの浸透圧がかかることで抽出されます。サイフォンやフレンチプレスのようにお湯に粉を混ぜて抽出する方法を浸漬法(しんしほう)と言います。浸漬法では、粉の内部(空洞内)の濃度と粉の周りのお湯の濃度差によって浸透圧がかかります。容器内のお湯の濃度が均一になった時点で浸透圧が止まり抽出が終わります。浸透圧が止まった後も粉とお湯を分離しないと、コーヒーエキスではない雑味成分まで溶け出してきます。そのためサイフォンやフレンチプレスはお湯を注ぎ、時間を気にしながら抽出するのです。一方、ハンドドリップのような抽出方法を透過法(とうかほう)と言います。透過法では蒸らしの時に高濃度のコーヒーを粉内部(空洞内)に作り出し、2投目以降のお湯を注ぐことによって浸透圧をかけてます。前述した通り、コーヒーエキスと雑味成分ではコーヒーエキスの方が先に溶け出します。透過法は繰り返しお湯を注ぐことによって、雑味成分が溶け出す前のコーヒーエキスだけを浸透圧によって抽出することを狙っています。ですので蒸らしをしっかり行わないと、サーバーに流れる前半のお湯にはコーヒーエキスが十分に溶け出していないコーヒーが出来上がってしまうのです。そして全体的に希薄な味わいになってしまいます。


■カップ1杯=○○ccの統一規格があるわけではない
12gのコーヒー豆から120cc抽出するのか140cc抽出するのかでは味に大きな開きができます。では、100gの豆でカップ何杯分を淹れられるのか、考えてみます。カップの容量が120ccと仮定して、1杯12gを基準とすると、単純計算で100[g] ÷ 12[g] = 8.3[杯] となります。シンプルに答えると「100gで概ね8杯分が目安」です。ただこれも、まとめてドリップする人(いつも家族の分も含め2杯以上をまとめてドリップする)だったら答えが変わってきます。コーヒーの面白いところが、2杯分一緒に抽出する時に必要な豆の量は2倍の24gではありません。2杯分を24gで淹れたコーヒーは1杯分を12gで淹れたコーヒーより濃く感じると思います。人それぞれの濃さ基準があるのですが、私は、2杯分を抽出する時は1杯分の約1.6倍の量の豆を使用します。1杯12gだとしたら2杯で19.2gで良いということです。ということは毎回2杯分抽出する人の場合は100[g] ÷ ( 19[g] ÷ 2[杯] ) = 10.526[杯]となるので、100gで概ね10杯分のコーヒーが抽出できる計算になります。これがコーヒーマシンで一気に4杯分抽出する人であれば、もっと差に開きが出ます。
条件次第で答えは変わるのですが、それでも漠然とした目安が必要かと思います。そんな時は「ペーパードリップであれば1杯12gが目安」という基準で考えることにしています。