商品と料金設定
◆コーヒーの味を決める要素(ドリップコーヒー)
・7割が豆の品質 = 素材
・2割が焙煎 = 酸味・苦味
・1割が抽出 = 濃さ・雑味抑制
つまり、美味しいコーヒーを飲みたいなら、品質の高い豆を買い、自分の好みに焙煎し、手順どおりに抽出する、ことです。お店で焙煎した豆を買うとすれば、実はその時点で9割もの要素が決まってしまいます。美味さを追求するなら品質優先、もちろん豆の価格は高くなります。特に「スペシャルティ・コーヒー」は別格です。私の知るところでは安くても「100gで800円以上」と記憶します。高い豆ほど美味いのが現実です。(ただし、スペシャルティコーヒーでなくても希少価値の高い豆は高価です)
味の決め手の残り1割が抽出方法ですが、「手順どおりに抽出すること」とは、抽出工程で起こる「ミス」を避けることにあります。ミスする危機はいくつかあり、コーヒー解説書には様々な理論とテクニックが記載されています。しかし、われわれ素人が身につけるに難しい技や教えもあります。シンプルに捉え、「ミス」の回数を減らせば良いと考えましょう。
◆スペシャルティ・コーヒーの定義
では、スペシャルティコーヒーとは何でしょう。これまでは、コーヒー豆の基準をコーヒーの生産者が決めていましたが、消費者側が美味しいコーヒーを飲みたいという思いで基準を定めたものです。具体的には、①美味しさ、②トレーサビリティ、③サステナビリティ、の各厳しい基準をクリアしているコーヒー豆のことです。
①美味しさ
提唱したのは、アメリカのスペシャルティコーヒー協会(SCAA)です。SCAAはコーヒーを100点満点で採点する評価基準を設け、点数が80点以上のものをスペシャルティコーヒーと呼んでいます。また各国でも国民性に合った味の基準が必要であり、日本では、際立った風味を持つ、風味に欠点がない、熟した甘みを持つ、繊細な酸味を持つ、後味の心地よさ等の基準を設け採点し、クリアしている豆です。
②トレーサビリティ
トレーサビリティとは、追跡可能という意味です。つまり栽培・収穫(農園、生産者)~ 加工 ~ 輸送~保管~焙煎(ロースター)~抽出(バリスタ)までを一貫したルートで管理し、流通経路をはっきりさせることで品質管理を維持しています。それぞれが力を発揮しながらコーヒー豆というバトンを繋いでいくことで、ようやくスペシャルティコーヒーというゴールへたどり着くことができるのです。
③サステナビリティ
サステナビリティとは、持続可能性という意味です。生産者へも正当な利益が配分されないと安定した栽培経営ができません。賃金保障や気候変動などコーヒーの未来を考えた対策そして価格設定が成されています。
しかし、これら3つの基準を満たしているコーヒー豆は全体の5%程度しかなく、価格は高くなってしまいます。そして「スペシャルティコーヒー」を購入するには専門店へお出掛けください。店頭では、生産国名・農園名、収穫時期などが明示されています。また、一定の収穫量しか扱えないので販売期間も短いのが特徴です。(スペシャルティコーヒーという商品で、同じ豆を安価で長期間販売している場合は、ここに記載したものとは異なるかもしれません。詳細は店主にお尋ねください)
◆スペシャルティ・コーヒーの実力、目隠し実験
スペシャルティ・コーヒーを使用し、実験を行いました。抽出テクニックに差がある3名でペーパードリップによりコーヒーを淹れ、味を比べるものです。一人目は私自身(知識・コダワリを持って挑む)、二人目は未経験者(適当に3分程度で淹れてもらう)、最後はコーヒーメーカー(ごく普通の器具、自動でプログラム通りに抽出する)です。出来上がった3つの抽出液をコーヒー好きの第三者に飲んでもらいましたが、違いを言い当てられませんでした。彼曰く「どれも美味い」。プロの舌なら微妙な違いを判別できるのでしょうが、飲み比べの訓練を積んでいない我々には、どれも美味い味なのです。言いかえれば、スペシャルティコーヒーは誰が淹れても、多少のミスがあっても美味いのです。それだけ実力を備えた豆と言えます。(高価な豆なので美味いはずだと思い込んで飲むことも、心理的な効果があるようです)
◆コーヒーの品質ピラミッド
スペシャルティコーヒーについて紹介しましたが、その割合は5%程度であり、ほとんどがこれに該当しないコーヒー豆となります。品質のピラミッドと呼ばれていますが、コマーシャルコーヒー → プレミアムコーヒー → スペシャルティコーヒーの順番に高い品質となります。
<コマーシャルコーヒー>
最も多く消費されているコーヒーです。コモディティコーヒーやメインストリームコーヒーとも呼ばれています。一般的に、コーヒーとして扱われているコーヒーで「商品先物取引」で売り買いされているコーヒーのことです。スーパーなどに並んでいるコーヒーもこれに該当するものがほとんどです。値段を最優先しているコーヒー豆で香りも味も劣るコーヒーということになります。銘柄は一見、1つの 産地名を指しているようですが、中身の豆は様々な農園から集められています。また、コーヒー豆は、生産者ごとではなく、全て混ぜられるため、頑張って品質向上に勤めている農家も他の農家と同じ評価になってしまいます。美味しいコーヒーとして(味で)取引されているわけではありません。
<プレミアムコーヒー>
プレミアムを名乗るための条件は、「産地や品種が特定でき、他の地区の豆が混入しないこと」「厳正な基準のもとで豆の選別・精製ができていること」「産地特有の個性を感じさせるもの」などです。普通のコーヒー屋さんで「ブランド名」を掲げて販売している豆です。例えば、ブルーマウンテン、キリマンジャロ、ハワイコナ、モカマタリなどの名前が有名です。スペシャルティコーヒーとの大きな違いはカッピングテスト等の味の審査を受けていないことです。
◆抽出工程でのミスとは
スペシャルティコーヒーは別格だとお伝えしましたが原点に返り、抽出工程で避けたい「ミス」について記述します。それは、
1.豆を酸化させること = 賞味期限切れのこと、豆内の二酸化炭素が重要、酸化を防ぎ、徐々に抜けながら香りの成分も放出してしまいます
2.豆を火傷(やけど)させること = 熱すぎると目的とする成分が抽出できません
3.粉とお湯の量がアンバランス = 濃い、薄い、安定しない
4.豆を長湯させること = 制限時間を超えてお湯を注ぐこと
5.豆を砕きすぎる = 粒の大きさがバラバラだと味は安定しない、微粉は味にも影響