日記
5. 焙煎
5.焙煎
焙煎(ロースト)とは、コーヒーの生豆を炒る加熱作業のことです。収穫・精製された生豆は淡緑色をしており、味も香ばしさもほとんどなく、この状態では飲むことはできません。焙煎が進むと豆は茶褐色、さらに黒褐色へと変化していきます。焙煎によって、豆に含まれる成分が化学変化を起こし、揮発性の素晴らしい香りや、苦味、酸味、甘味といったコーヒー独特の風味が生まれます。焙煎時間や熱のかけ方の違いによって、コーヒー豆には浅炒り・中炒り・深炒りといった焙煎の度合いが生じ、コーヒーの風味が大きく変化します。
【焙煎度について】
焙煎度は、全部で8段階に分かれています。一般的に、浅く炒ったものほど「酸味」が強く、深く炒るほど「苦み」が強く感じられるようになります。このことは生豆に含まれているさまざまな成分が、焙煎時に化学変化を起こし、酸味や苦味が生成されていることを示しています。この変化が、コーヒーの色、味、香りに大きな影響をあたえ、独特の風味をもたらします。
❶ ライトロースト
うっすらと焦げ目がついている状態。黄色がかった小麦色。香り・コクはまだ不十分。
❷ シナモンロースト
シナモン色。ごく浅い炒り方で、まだ青臭く飲用には適さない。
❸ ミディアムロースト
茶褐色。アメリカン・タイプの軽い味わい。
❹ ハイロースト
ミディアムよりやや深い炒り方。喫茶店や家庭で飲まれるレギュラーコーヒーは、この段階のものが多い。
❺ シティロースト
最も標準的な炒り方。鮮やかなコーヒーブラウン。これも喫茶店や家庭で味わうことが多い深さ。最近ではエスプレッソ用としても用いられる。
❻ フルシティロースト
ダークブラウン。アイスコーヒー用の豆を炒るときはこの段階まで熱を加える。「炭焼珈琲」もこのタイプが多い。シティ同様エスプレッソにも用いられる。
❼ フレンチロースト
強い苦味と独特の香りが楽しめる。カフェ・オ・レやウィンナーコーヒーなど、ヨーロピアンスタイルのアレンジメニュー向きである。
❽ イタリアンロースト
色は黒に近い状態。強い苦味と濃厚な味わい。これが最も深い炒り方で、かつてはエスプレッソ、カプチーノなどに使用されることが多かった。
【手順、ポイント】
① 火にかける。
中火で高さ10〜15センチくらいのところで、水平に保ちながら網をしっかり振ります。焼きムラができないように、手首を使ってリズミカルに揺すり続けます。3分ほどすると水分がけ、少し色づいてきます。そのまま炒り続けると、薄皮が取れて薄茶色に変化してきます。
② 1爆ぜ(ハゼ)
さらに10分くらい炒り続けると、パチパチとはじける「爆ぜ(ハゼ)」の音が聞こえてきます。1ハゼが終わった時が「中炒り」
③ 2爆ぜ(ハゼ)
焙煎開始から15分くらい経つと、再び「チリチリ」という音がしてきます。これが2ハゼで、豆が十分に膨らんできた証拠です。ここまで炒ると、煙が出てコーヒーらしい香ばしい香りがし、「中深炒り」程度になっています。ここからは焙煎の進行も早いので、好みの炒り加減を見極めて火から 下ろしてください。
④ 焙煎後は素早く冷ます。
火から下ろしたら網にあげます。豆にこもっている熱でも焙煎が進んでしまうので、うちわやドライヤーの冷風などで急冷します。粗熱が取れたら、そのまま置いて完全に冷ましてできあがり。
Point1:爆ぜ(ハゼ)について
焙煎によって豆の内部が熱膨張することで、内部が割れて「パチッ」という「爆ぜ(ハゼ)」音が聞こえます。焙煎時間によるハゼの目安は図のようになります。
Point2:薄皮に気をつけましょう
焙煎中には豆からはがれた薄皮(チャフ)が舞うので、ご自宅のキッチンで焙煎する場合は気をつけてください。カセットコンロをお持ちの方は、屋外(風のない日に)で焙煎するのも良いでしょう。
Point3:焙煎した豆の抽出について
焙煎したてのコーヒー豆はガスを含んでいるため、焙煎後すぐに淹れるとお湯とコーヒーがなじみにくく、あっさりした味わいに抽出されることもあります。お好みにもよりますが2日くらい置き、少しガスが出てから淹れても良いでしょう
【伝熱方式による焙煎の違い】
焙煎には様々な伝熱方法がありますが、焙煎方法ごとの特性と、生豆が持つ特性を考慮して、最適な焙煎時間や加熱方法をとる必要があります。
❶ 直火式焙煎
焼き鳥、うなぎ、網焼きステーキなどのように、文字通り生豆に直接火をあて炒る方法が直火式焙煎です。手網を使った焙煎もその一つ。コーヒー豆は直火で加熱すると焼きムラが生じやすく、中心部まで均一に焼くことは難しいです。プロたちは卓越した焙煎技術によって、香りやコクがストレートに出た、メリハリある独特の風味を作り出しているといえるでしょう。
❷ 熱風式焙煎
直火ではなく、熱源から発生した熱風を使用した焙煎方法です。熱風式焙煎は外部のバーナーで発生させた熱風をドラムに送り込み加熱するため、熱量のコントロールをしやすく、ムラなく均質に炒り上がります。この方式は、豆が持つ個性を安定的に出しやすく、大量のコーヒーを効率よく焙煎することができるため大型工場など多くの場所で使用されています。
❸炭焼コーヒーの焙煎
炭火による間接加熱で作られるコーヒーを炭焼コーヒーと呼びます。炭の熱源は赤外線の放射量が多く、温度変化の上下差が少ない点が特徴と言えます。炭火は長時間の焙煎に適した熱源であり、間接加熱として利用した場合、コーヒー豆の表面から中心部にかけて均一に加熱することができます。焼きムラのない、コーヒー豆の持つ特性がよく出たコーヒーであるとともに、炭火特有の香ばしい香りが独特の風味を醸し出しています。
◎遠赤外線焙煎
備長炭と同じ遠赤外線で焙煎するセラミック遠赤外線コーヒー焙煎機があります。
遠赤外線のもつ「物質の分子を振動させる働き」により、じっくりと豆の内部まで加熱し、芯からふっくら香り高いコーヒーを焙煎することができます。遠赤外線加熱で、コーヒ豆の繊維を壊さないので、豆本来の味を閉じ込め、香り長持ち。雑味や苦味、渋みを抑え、香り、甘み、コクを楽しめる仕上がりです。