日記
ウェーブ
<ファーストウェーブ>
1800年代~1970年頃に起こった第1の波です。
それまで上流階級の嗜みだったコーヒーが庶民にも身近なものになった時代、大量生産と大量消費が特長で味の探求はあまりなかったようです。19世紀後半から1960年代、流通の発達によってコーヒーは安価になり、大量生産され一般大衆の飲み物としてポピュラーな存在となりました。反面、粗悪品も多く、味もイマイチなのが当たり前の時代でした。そして、日本人の加藤サルトリ博士が発明したインスタントコーヒーによりコーヒー事業は大きく変化しました。日本では1969年4月にUCC上島珈琲の創業者・上島忠雄氏が立ち上げたプロジェクトにより缶コーヒーが登場し、翌年の大阪万博で話題となりました。さらにコーヒーメーカーが登場したことで、コーヒーは自宅でも楽しめるものになりました。
<セカンドウェーブ>
1970年頃~1990年頃に起きた第2の波のことを差します。
品質にこだわり、美味しさへの追求が始まった時代です。シアトル系の深煎りコーヒーが人気になり、カフェラテなどミルクやフレーバーを追加した飲み方が生まれました。また、スペシャルティコーヒーという概念が生まれたのもセカンドウェーブの特長です。
1960~90年代に起こった深煎りブーム。1971年にスターバックスがアメリカ・シアトルで開業し、タリーズなどのいわゆる「シアトル系」のコーヒーチェーンが人気を博しました。高品質の豆を深煎りし、カフェオレやアレンジコーヒーが流行り、人気コーヒーチェーンのカップを片手に歩く姿がファッションアイコンとなりました。1996年8月にはスターバックス日本第一号が銀座にオープン。ドリップコーヒーだけではなく、エスプレッソをベースとしたラテなどが人気を博し、コーヒー好きのすそ野がさらに広がりました。
<サードウェーブ>
サードウェーブコーヒーとは、2000年代に入りコーヒー業界に広まった新たな波、そこで提供されるコーヒーを言います。2002年頃からアメリカを中心に使用され始めたワードで、主な特長は「シングルオリジン」「浅煎り」「ハンドドリップ」「ダイレクトトレード」の4つです。
1.産地の特性が生きるシングルオリジン
シングルオリジンコーヒーとは、生産地域を限定、かつ明確にしたコーヒーのことです。国や地域、銘柄といった大きなカテゴリーではなく、1つのエリアや1つの農園、1人の生産者、1つの苗木など小さいカテゴリーに限定されます。
パッケージには、国名や銘柄だけでなく、農園名や生産者名なども記載されます。シングルオリジンコーヒーの良い点は、品質にブレが少なく高品質なコーヒーを安定して楽しめるところです。シングルオリジンコーヒーの中でも、1つの農園に特定したものをシングルエステートコーヒーと呼びます。その農園特有の風味を楽しめるだけでなく、作ってくれた人々に想いを寄せられる、正に生産者の顔が見えるコーヒーです。農園で生産されてから私達が飲むまで、その経路がはっきりとわかることが強みです。
2.酸味際立つ浅煎りコーヒー
サードウェーブコーヒーの味わいの特長は、浅煎りコーヒー豆で淹れたコーヒーのくっきりとした酸味です。セカンドウェーブの特長である深煎りコーヒーと大きく異なる味わいです。コーヒー豆本来の酸味をしっかりと味わう飲み方です。
コーヒーの酸味=酸っぱさと捉えて敬遠する人もいるようですが、コーヒー本来の酸味は果実由来のフルーティさを感じると言われています。
3.丁寧に淹れるハンドドリップ
サードウェーブコーヒーは、基本的に1杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れます。エスプレッソマシンや独自のコーヒーマシンで淹れるコーヒーショップも多い中で、淹れ方にもこだわりハンドドリップする点が特長です。日本の古き良き喫茶店と通じるところがあるようです。
4.生産者を守るダイレクトトレード
ダイレクトトレードは、生産者からコーヒーショップや消費者へ仲介者の手を介さずに流通することです。仲介料が不要となり、生産者にしっかりと料金が支払われます。これまでは、仲介者が不適正な価格でコーヒー豆を買い取ることも多く、たびたび問題視されていました。直接的な取引により生産者へ適正な利益が還元され、さらには高品質の維持・向上を図りながらコーヒー生産を継続できる体制作りが、サードウェーブの重要なテーマです。サスティナブルな社会を推進する波が、コーヒー業界にも訪れています。
■サードウェーブコーヒーの基本的な淹れ方
コーヒーは、浅煎りと深煎りとでは味だけでなく比重が異なります。浅煎りの方が深煎りよりも比重が重く、お湯を注いだときにコーヒー粉が沈み込みやすいのです。そのため、コーヒー粉が沈み込む前に手早くお湯を注ぎ足すことがポイントです。
また、酸味はコーヒー成分の中でも早く抽出されます。ドリップに時間をかけるほど酸味が出すぎてしまいます。2湯目で調節します。2湯目をたくさん注げば注湯回数が減って抽出時間が短くなり、さっぱりとした酸味になります。反対に、2湯目を少しずつ注げば注湯回数が増えて抽出時間が長くなり、酸味がしっかりします。
コーヒー豆の品質向上はもちろん、生産者から消費者に至るまでの適正なシステムなど、サードウェーブコーヒーは社会の方向性を反映したものです。今後、さらに自分好みの味わいを追求する新たな波が広まるのでしょう。コーヒーの歴史を考えながら、お好みの酸味でサードウェーブコーヒーを楽しみましょう。