日記

2024-03-24 10:08:00

19. ジャンピングという指標

19.ジャンビングという指標
紅茶を淹れるとき、「ジャンピング」という言葉を耳にします。ポット内のお湯が対流して茶葉が舞い踊っているあの様をいいます。このジャンピングはお湯の浸透速度だけでなく、味に影響を与える重要な指標なのです。美味しい紅茶を淹れるためには、空気をたくさん含んだお湯が大切だとか、酸素を多く含んだお湯が美味しいとか、言われています。まず、お茶から最も良い味を引き出すためには、水は酸素を含んでいなくてはなりません。水は沸かされるたびに酸素は減少しています。NHKの番組では、「茶葉に空気が付いて対流が起こり美味しい紅茶に必要なジャンピングが起こる」と解説していました。では「空気」と「酸素」では意味が異なるのでしょうか。空気の成分の78% は「窒素」です。ですから「窒素」が影響している可能性も有るのです。「窒素」は一般に不活性で、化学変化を起こしにくい気体ですので、窒素が紅茶の美味しさを変化させるとは思えません。逆にその不活性を利用して、通常起こる反応を押さえることで、通常とは違う紅茶になる可能性も有るといえます。血圧を下げると言われているギャバロン茶はその窒素の嫌気性を利用してお茶を変化させているのです。
空気の成分の約78%が窒素だということは説明しましたが、酸素は約21%、そして残りの多くがアルゴンガスで約0.9%、二酸化炭素は約0.03%と微量です。しかしほんの少しの二酸化炭素によって、水のpH(酸性度、アルカリ度)が大きく変わることは良く知られています。
水は、沸騰させると、どんどん空気が抜けていきます。当然、空気の成分である二酸化炭素もどんどん抜けていきます。そのために沸騰させ続けていると、お湯の性質は、中性からアルカリ性へと変わっていきます。
・沸騰していないお湯⇒  pH = 7.8
・沸騰したてのお湯 ⇒  pH = 8.3~8.5
・沸かしすぎのお湯 (約10分間沸騰させた)⇒  pH = 9.0~9.2
このように、二酸化炭素によって水の性質が変わっていくため、二酸化炭素が紅茶の美味しさに大きく関係している可能性も大きいのです。ある有名な実験室にて、沸かし抜いて空気を殆ど抜いたお湯に改めて、空気、酸素、二酸化炭素の3種類のガスを吹き込んで、酸素比率の高いお湯、二酸化炭素比率の高いお湯を作り出し、紅茶を淹れて飲み比べたそうです。抽出後に紅茶の空気成分はどんどん変わっいくので、味自体も時間と共にどんどん変わっていきます。特に変化の速いのは二酸化炭素だそうです。沸きたての新鮮なお湯で入れた美味しい紅茶に近いのも、二酸化炭素を吹き込んだ紅茶です。一方、酸素を吹き込んだお湯で淹れた紅茶は、どんどん渋くなったそうです。二酸化炭素の場合は、入ったり抜けたりして味が戻るような感覚もあるのですが、酸素の場合は成分を酸化させ、固定してしまうような感じで、一旦渋くなると元には戻らないようです。結果として、何が紅茶を美味しくさせているかは判りませんでしたが、酸素は紅茶を美味しくさせるのではなく、渋くさせているようです。しかし、この渋さは、ミルクティーに非常に合うのです。ミルクティーが基本のイギリスでは、以下の公式な記述「お茶から最も良い味を引き出す
ために、水は酸素を含んでいなくてはなりません、もし水が一度ならず沸かされるなら、これは減少しています。」という表記は、正しいのです。でも、ストレートティーの方が多い日本では、美味しい紅茶に必要なのは「空気」と言うべきでしょう。
そして一番美味しいのは、ストレートの場合、沸かしたての新鮮なお湯で淹れた紅茶です。どこの茶園でも、どこのティーオークションでも、「沸かしたての新鮮なお湯」でテイスティングしているのです。つまり、沸かしたての新鮮なお湯で一番美味しいように紅茶は作られているということです。しかし沸かしたてでも、沸かす前の水に空気が少なかったらNGです。たくさんの空気(湧いたときに一定となる量)を含んだ水が必要です。そして、その空気の状態を判るように見せてくれているのが「ジャンピング」という現象なのです。その動きから抽出速度や味自体に影響する空気の状態を明確に見せてくれる重要な指標と言えます。